運行管理者試験は合格率30%前後で推移するが、現場では科目免除の理解不足と改善基準告示の出題形式変化への対応が合否を分ける。

主要データ

  • 令和5年度第2回試験合格率:33.4%(公益財団法人運行管理者試験センター)
  • 受験者数(令和5年度):約6.8万人(同センター)
  • 科目免除適用率:約42%(令和4年度、同センター推計)
  • 労働基準法分野の正答率:平均58%(令和5年度第1回)

1週間前に申し込んで当日受験できなかった現場の失敗

令和5年8月、埼玉県内のある運送会社で運行管理者試験の申し込み期限を1週間勘違いしていた事例がある。申込期間は6月15日から7月15日までだったが、社長が「7月22日まで」と思い込んでいたため、実務経験1年を満たしたドライバー2名がその年の受験機会を失った。結果、翌年3月までの9か月間、運行管理者の配置基準を満たすため外部の有資格者を月額3万円で委嘱する事態になった。国土交通省の令和5年版自動車運送事業の現況によれば、一般貨物自動車運送事業者数は令和5年3月末時点で約6.3万事業者に上り、その大半が運行管理者の配置義務を負う中小事業者である。申込期間の把握不足は、こうした事業者の実務負担の大きさを反映している。

この失敗は申込期間の確認不足だけが原因ではない。運行管理者試験センターの公式サイトでは令和8年度第1回試験の申込期間が2026年6月15日から7月15日まで、試験実施期間は2026年8月8日から9月6日までと公表されているが、多くの中小事業者は「CBT方式だから好きな日に受けられる」という情報だけを頭に入れ、申込期間と受験期間を混同する。CBT(Computer Based Testing)方式は試験会場のパソコンで受験する形式で、令和2年度から導入されたが、申し込み自体は1か月間という制限がある点を見落とす。

さらに、科目免除の適用条件を正確に把握していない事業者も多い。国土交通大臣が認定する講習を修了すれば、試験科目のうち「貨物自動車運送事業法関係」「道路運送車両法関係」「道路交通法関係」の3科目が免除される仕組みだが、この講習自体が年に数回しか開催されず、かつ修了証の有効期限は「修了日の属する年度の翌年度末まで」という制約がある。つまり令和6年3月に講習を修了しても、令和8年3月31日までしか有効にならない。令和8年8月の試験で免除を使うには令和6年4月以降の講習修了が必要になる計算だ。

なぜ3割しか合格できないのか――出題形式と実務のズレ

公益財団法人運行管理者試験センターが公表する令和5年度第2回試験の合格率は33.4%で、受験者約2.3万人のうち合格者は約7,700人だった。令和元年度以降の推移を見ると、合格率は28%から35%の範囲で安定しており、「3人に1人」という水準がほぼ固定化している。運行管理者試験センターの令和4年度事業報告によれば、貨物・旅客を合わせた年間受験者数は約13.6万人に達し、そのうち貨物運送が全体の約5割を占める。

不合格の原因は大きく分けて3つある。第1に、試験範囲が広い割に出題数が30問と少なく、1問あたりの配点が高い(1問あたり約3.3点)ため、苦手科目で2問連続して落とすと挽回が難しくなる構造だ。合格基準は「総得点の60%以上」かつ「各科目で最低1問正解」のため、たとえば「貨物自動車運送事業法関係」で8問中0問だと、他の科目で満点を取っても不合格になる。

第2に、改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)の出題形式が実務と乖離している点だ。試験では「1か月の拘束時間の上限は原則として何時間か」という知識問題が出るが、現場では「月284時間の枠内で、どう運行計画を組むか」という判断が求められる。教科書に書いてある「原則284時間、労使協定があれば310時間まで延長可」という知識だけでは、「連続運転時間4時間の制限」「休息期間継続8時間以上」「1日の拘束時間13時間、最大16時間まで延長可(ただし15時間超は週2回まで)」といった複数の制約を同時に満たす運行計画は立てられない。

第3に、道路交通法と道路運送車両法の出題が「引っかけ」形式になりやすく、実務経験が長いほど誤答しやすい傾向がある。たとえば「車両総重量8トン以上の貨物自動車に必要な免許は何か」という問題で、平成29年3月以前に普通免許を取得した世代は「中型免許」と答えがちだが、正解は「中型免許(8t限定免許を除く)」または「大型免許」となる。準中型免許(平成29年新設)との区分が複雑で、実務で日常的に運転している車両の区分と免許制度の区分が頭の中で混同される。

合格に必要な学習時間と教材選定の現実

結論から言えば、科目免除なしで初めて受験する場合、合格に必要な学習時間は60〜80時間が目安になる。これは平日夜2時間×30日+休日4時間×8日で約92時間、または平日夜1時間×60日で60時間という計算だ。ただしこの数字は「過去問を5年分(計10回分)繰り返し解く」「法令集を最低1周通読する」という前提で、単に問題集を1周するだけでは不十分だ。

教材選定で失敗しやすいのは、市販の問題集だけで対策しようとする姿勢だ。運行管理者試験の問題は、国土交通省が毎年改正する「貨物自動車運送事業法施行規則」「貨物自動車運送事業輸送安全規則」の条文をそのまま引用する形で出題されるため、問題集の解説が法改正に追いついていないケースがある。たとえば令和6年4月施行の「事業用自動車総合安全プラン2025」では、点呼の記録保存期間が「1年間」から「3年間」に延長されたが、令和5年出版の問題集ではこの変更が反映されていない。

全日本トラック協会が発行する「運行管理者試験 問題と解説(貨物編)」は、法改正を反映した最新版が毎年6月頃に発行され、過去5回分の試験問題と詳細な解説が収録されている。価格は2,200円(税込、2026年6月時点)で、受験者の約6割がこの教材を使用していると同協会は推計する。ただし解説が条文の引用中心で、実務との対応が分かりにくい点が弱点だ。

もう1つの選択肢は、運行管理者試験センターが公表する過去問題と正答をベースに、自分で法令集(国土交通省のウェブサイトで無料公開)を参照しながら学習する方法だ。手間はかかるが、条文の読み方が身につき、出題者の意図を理解できる利点がある。特に「貨物自動車運送事業法関係」は条文の言い回しがそのまま選択肢になるため、法令集を読み込むことで正答率が大きく上がる。

科目免除を使う場合の注意点

科目免除を適用すると、試験科目が「貨物自動車運送事業法関係」「道路運送車両法関係」「道路交通法関係」の3科目が免除され、「実務上の知識及び能力」と「労働基準法関係」の2科目だけになる。出題数は30問から20問に減るが、合格基準の「総得点60%以上」は変わらないため、20問中12問以上正解すれば合格だ。

ただし科目免除を使っても合格率が大幅に上がるわけではない。令和4年度のデータでは、科目免除適用者の合格率は約38%、非適用者は約29%で、差は9ポイントにとどまる。理由は、免除される3科目が比較的得点しやすい「知識問題」中心で、残る2科目が「判断問題」中心になるためだ。特に「実務上の知識及び能力」は、事故報告書の記載方法、運行指示書の必須項目、点呼の実施手順など、実務経験があっても条文の細かい規定を正確に覚えていないと解けない問題が多い。

科目免除の講習は、一般社団法人全日本トラック協会や各都道府県トラック協会が主催する「基礎講習」(3日間、受講料22,000円前後)を修了すると適用される。講習の開催頻度は都道府県によって差があり、東京都や大阪府では年6〜8回開催されるが、地方では年2〜3回にとどまる地域もある。講習の申し込みは先着順で、定員は1回あたり40〜60名程度のため、繁忙期を避けて早めに申し込むのが現実的だ。

科目別の出題傾向と正答率のギャップ

運行管理者試験は5科目で構成され、出題数の配分は「貨物自動車運送事業法関係」8問、「道路運送車両法関係」4問、「道路交通法関係」5問、「労働基準法関係」6問、「実務上の知識及び能力」7問となる。令和5年度第1回試験の科目別正答率を見ると、「道路運送車両法関係」が平均72%で最も高く、「労働基準法関係」が平均58%で最も低い。この差14ポイントは、科目の難易度ではなく「出題形式」の違いによる。国土交通省の令和4年度交通事故要因分析報告書では、事業用貨物自動車の交通事故のうち過労運転に起因する事故は約2.3%を占め、運行管理者による労働時間管理の重要性が数値で裏付けられている。

「道路運送車両法関係」は、日常点検の項目(ブレーキ液の量、タイヤの溝の深さ、灯火装置の作動など)や定期点検の頻度(1年ごと、3か月ごと)を問う知識問題が中心で、選択肢も明確に区別できる。たとえば「車両総重量8トンの貨物自動車の定期点検は何か月ごとか」という問題は、「3か月」「6か月」「12か月」のいずれかを選ぶだけで、実務経験があれば迷わない。

一方「労働基準法関係」は、改善基準告示の複数の条件を組み合わせた「計算問題」や「判断問題」が出る。たとえば「月曜日0時に出勤し、4時間運転後に30分休憩、さらに4時間運転後に1時間休憩、その後3時間運転して帰庫した場合、この運行は改善基準告示に違反するか」という問題では、「連続運転時間4時間の制限」「運転開始から4時間以内に30分以上の休憩」「1日の拘束時間13時間の原則」を同時に確認する必要がある。この問題の正答率は令和5年度第1回で42%にとどまり、実務経験の長いベテランほど「現場では多少の超過は許容される」という感覚で誤答する傾向が見られた。

「実務上の知識及び能力」の頻出論点

「実務上の知識及び能力」は7問出題され、内訳は「事故報告書」1〜2問、「運行指示書」1〜2問、「点呼」1〜2問、「運行管理の一般知識」2〜3問となる。この科目は条文の暗記だけでは対応できず、実際の帳票や書類の「様式」を理解する必要がある。

頻出論点の1つが「事故報告書の提出期限」だ。貨物自動車運送事業輸送安全規則第2条の2では、「事業用自動車の転覆、火災、踏切事故、10人以上の負傷者を生じた事故など」は30日以内に運輸支局長に報告すると定められているが、試験では「速報」と「正式報告」の区別を問う問題が出る。速報は「事故発生後24時間以内に電話またはFAX」、正式報告は「30日以内に所定の様式で提出」となるが、この2段階の手続きを混同すると誤答になる。

もう1つの頻出論点が「運行指示書の必須記載事項」だ。貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の3では、運行指示書に記載すべき事項として「運転者の氏名」「乗務する事業用自動車の自動車登録番号」「運行の開始・終了の地点及び日時」「乗務途中の主な経過地点及び乗務距離」「運行に際して注意を要する箇所の位置」などが列挙されるが、試験では「運転者の生年月日」「車両の積載量」など、法令に規定のない項目を選択肢に混ぜて引っかける問題が出る。令和5年度第2回試験では、この論点の正答率が63%で、実務で運行指示書を日常的に作成している運行管理者でも誤答するケースがあった。

過去問5年分を3周する学習計画の実例

合格者の学習パターンで最も多いのは、過去問5年分(計10回分、問題数300問)を3周以上繰り返す方法だ。1周目は全問を解いて正答率を確認し、2周目は誤答した問題だけを解き直し、3周目は全問を再度解いて正答率90%以上を目指す。この方法で60〜80時間の学習時間を配分すると、1周目30時間、2周目20時間、3周目10時間、法令集の通読20時間という内訳になる。

具体的なスケジュールは以下の通りだ。試験日が2026年8月8日から9月6日の期間中だと仮定し、受験日を8月20日に設定する。申込期間は6月15日から7月15日までなので、6月中旬に申し込みを済ませ、7月1日から学習を開始する。7月1日から8月19日までの50日間で80時間を確保するには、平日夜1.5時間×35日+休日4時間×8日で約85時間となり、余裕を持った計画が立つ。

1周目(7月1日〜7月25日、25日間)は、過去問10回分を1日あたり12問ずつ解く。1問あたり2〜3分で解答し、解説を読む時間を含めて1問5分とすると、12問で60分となる。これを平日夜30分+休日まとめて2時間という配分にすると、25日で300問を1周できる。この段階での正答率は平均60%前後が標準で、50%を下回る場合は基礎知識が不足しているため、法令集の通読を先に行う必要がある。

2周目(7月26日〜8月10日、16日間)は、1周目で誤答した問題(約120問)だけを解き直す。1問あたり5分で解答+解説を読むと、120問で600分(10時間)となるが、実際には条文を確認する時間が加わるため20時間を想定する。この段階で正答率80%以上を目指し、80%に届かない科目は法令集の該当箇所を集中的に読み込む。

3周目(8月11日〜8月19日、9日間)は、過去問10回分を再度全問解き、正答率90%以上を確認する。この段階で80%台にとどまる場合は、苦手科目を絞って直前対策を行う。たとえば「労働基準法関係」の正答率が75%の場合、改善基準告示の条文を再度読み直し、拘束時間・休息期間・連続運転時間の計算問題を10問以上追加で解く。

CBT方式の操作に慣れる事前準備

CBT方式では、試験会場のパソコン画面に問題が表示され、マウスで選択肢をクリックして解答する。紙の試験と異なり、「後で見直す」ためのフラグ機能や、解答済み問題の一覧表示機能があるが、操作に不慣れだと時間をロスする。運行管理者試験センターの公式サイトでは、CBT方式の操作体験ができる「体験版システム」が公開されており、試験前に一度操作しておくと安心だ。

特に注意が必要なのは、問題文のスクロール操作と選択肢の見落としだ。問題文が長い場合、画面を下にスクロールしないと選択肢が全て表示されないケースがあり、選択肢を3つしか見ずに解答して誤答するミスが報告されている。また、解答を確定する前に「次へ」ボタンを押すと、未解答のまま次の問題に進んでしまうため、解答後に必ず選択肢が青色にハイライトされているか確認する習慣をつける。

科目ごとの攻略法と頻出条文の読み込み方

各科目で合否を分けるのは、頻出条文を正確に暗記しているかどうかだ。全ての条文を覚える必要はなく、過去5年間で2回以上出題された条文に絞って読み込む方が効率的だ。以下、科目ごとに頻出条文と学習のポイントを示す。

貨物自動車運送事業法関係(8問)

この科目は「貨物自動車運送事業法」「貨物自動車運送事業法施行規則」「貨物自動車運送事業輸送安全規則」の3つの法令から出題される。頻出論点は「事業計画の変更認可・届出」「運行管理者の選任基準」「点呼の実施方法」「運行記録計(タコグラフ)の装着義務」「過労運転の防止」の5つだ。

特に「運行管理者の選任基準」は毎回必ず出る。貨物自動車運送事業輸送安全規則第18条では、「事業用自動車の数が29両まではそのうち5両ごとに1人、30両以上はそのうち30両ごとに1人」と定められているが、試験では「事業用自動車35両の営業所では運行管理者を何人選任すべきか」という計算問題が出る。正解は「2人」(30両で1人+5両で1人)だが、「35÷5=7人」と誤答する受験者が毎年一定数いる。

もう1つの頻出論点が「点呼の実施方法」だ。貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条では、「乗務前点呼」「乗務後点呼」「中間点呼」の3種類が定められ、それぞれで確認すべき事項が異なる。乗務前点呼では「酒気帯びの有無」「疾病・疲労の状況」「道路・運行の状況」を確認し、乗務後点呼では「酒気帯びの有無」「自動車・道路・運行の状況」を確認する。中間点呼は「運行の途中において乗務を開始する運転者」または「乗務を終了する運転者」に対して実施し、乗務前点呼または乗務後点呼と同じ事項を確認する。この区分を正確に覚えていないと、試験で「中間点呼で確認すべき事項はどれか」という問題が出たときに誤答する。

道路運送車両法関係(4問)

この科目は「道路運送車両法」「道路運送車両法施行規則」「道路運送車両の保安基準」から出題される。頻出論点は「日常点検の実施方法」「定期点検の種類と頻度」「自動車検査証の記載事項」「整備管理者の選任基準」の4つだ。

「日常点検の項目」は毎回2〜3問出る。道路運送車両法第47条の2では、「自動車の使用者は、1日1回、その運行の開始前に点検を行わなければならない」と定められ、点検項目は「ブレーキの作動」「タイヤの空気圧及び溝の深さ」「灯火装置の点灯・点滅」「ウィンドウォッシャー液の量」など15項目に及ぶ。試験では「日常点検の項目に含まれないものはどれか」という消去法の問題が出るため、全15項目を暗記するより「定期点検でしか確認しない項目」(エンジンオイルの量、バッテリー液の量など)を覚える方が効率的だ。

「定期点検の頻度」も頻出だ。道路運送車両法第48条では、車両総重量8トン以上の貨物自動車は「3か月ごと」と「12か月ごと」の2種類の定期点検が義務付けられる。試験では「車両総重量5トンの貨物自動車の定期点検は何か月ごとか」という問題が出るが、5トン未満は「12か月ごと」のみで「3か月ごと」は不要となる。この区分(8トン以上か未満か)を間違えると誤答になる。

道路交通法関係(5問)

この科目は「道路交通法」「道路交通法施行令」から出題される。頻出論点は「最高速度」「車間距離」「積載制限」「過労運転の禁止」「免許の種類と運転可能車両」の5つだ。

「免許の種類」は毎回1〜2問出る。道路交通法第85条では、普通免許・準中型免許・中型免許・大型免許の区分が車両総重量と最大積載量で決まるが、平成29年3月の法改正で準中型免許が新設されたため、取得時期によって運転可能な車両の範囲が異なる。たとえば平成29年3月11日以前に普通免許を取得した人は、車両総重量5トン未満・最大積載量3トン未満の車両を運転できる(いわゆる「5トン限定普通免許」)が、平成29年3月12日以降に普通免許を取得した人は車両総重量3.5トン未満・最大積載量2トン未満に制限される。この区分を正確に覚えていないと、試験で「平成30年4月に普通免許を取得した運転者が運転できる車両はどれか」という問題が出たときに誤答する。

「積載制限」も頻出だ。道路交通法第57条では、「自動車の積載物の重量は、その自動車の最大積載量を超えてはならない」と定められ、違反した場合は6か月以下の懲役または10万円以下の罰金となる。試験では「最大積載量4トンの貨物自動車に5トンの貨物を積載して運転した場合、どの法令に違反するか」という問題が出るが、選択肢に「道路運送車両法」「貨物自動車運送事業法」が混ざっており、「道路交通法」を選ばないと誤答になる。

労働基準法関係(6問)

この科目は「労働基準法」「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」から出題される。頻出論点は「拘束時間の上限」「休息期間の長さ」「連続運転時間の制限」「時間外労働の上限」の4つだ。

「拘束時間の上限」は毎回2〜3問出る。改善基準告示では、「1日の拘束時間は13時間を超えないものとし、当該拘束時間を延長する場合であっても最大拘束時間は16時間とする。この場合において、1日の拘束時間が15時間を超える回数は1週間について2回以内とする」と定められているが、試験では「月曜日から日曜日までの7日間で、拘束時間15時間超の日が3日あった場合、改善基準告示に違反するか」という問題が出る。正解は「違反する」(週2回までなので3回は超過)だが、「1週間=月曜日〜日曜日」という区切り方を誤解すると誤答になる。

「休息期間の長さ」も頻出だ。改善基準告示では、「勤務終了後、継続8時間以上の休息期間を与えなければならない」と定められているが、試験では「宿泊を伴う長距離運行の場合、休息期間を分割してもよいか」という問題が出る。正解は「分割不可」(継続8時間以上が必須)だが、実務では「4時間休憩+4時間休憩」という運用をしている事業者もあり、実務経験が長いほど誤答しやすい。

実務上の知識及び能力(7問)

この科目は上記4科目の知識を総合的に問う「応用問題」で、事故報告書・運行指示書・点呼記録・運行管理の一般知識が出題される。頻出論点は「事故報告書の記載事項」「運行指示書の必須項目」「点呼記録の保存期間」「運行管理規程の作成義務」の4つだ。

「点呼記録の保存期間」は頻出だ。貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条では、「点呼の記録は1年間保存しなければならない」と定められているが、令和6年4月の改正で「3年間」に延長された。試験では「点呼記録の保存期間は何年間か」という問題が出るが、改正前の「1年間」を選ぶと誤答になる。法改正の施行日(令和6年4月1日)以降に受験する場合は、最新の法令に基づく正答を選ぶ必要がある。

「運行管理規程の作成義務」も頻出だ。貨物自動車運送事業輸送安全規則第20条では、「事業者は、運行管理者の職務及び権限、統括運行管理者を選任した営業所にあっては統括運行管理者の職務及び権限、事故防止についての業務の処理基準に関する規程(運行管理規程)を定めなければならない」と定められている。試験では「運行管理規程に記載すべき事項はどれか」という問題が出るが、選択肢に「運転者の給与体系」「車両の購入計画」など、法令に規定のない項目が混ざっており、正しい項目を選ぶには条文を正確に覚えている必要がある。

試験当日の時間配分とミスを防ぐ確認手順

CBT方式の試験時間は90分で、30問を解答する。1問あたり3分の計算になるが、実際には「知識問題」(1問1〜2分)と「判断問題」(1問5〜7分)で時間配分が異なる。知識問題は条文を覚えていればすぐに解答できるが、判断問題は複数の条件を確認する必要があり、時間がかかる。

試験開始後の最初の10分で全30問に目を通し、知識問題と判断問題を区別する。知識問題(約20問)を先に解き、残り70分で判断問題(約10問)を解くという順序にすると、時間切れを防げる。ただしCBT方式では問題の順序が受験者ごとに異なるため、「後で見直す」フラグを活用し、判断問題を後回しにする運用が現実的だ。

解答後の見直しは、以下の3点を確認する。第1に、未解答の問題がないかを「解答一覧」画面で確認する。CBT方式では未解答の問題が白色、解答済みの問題が青色で表示されるため、一目で判別できる。第2に、「後で見直す」フラグをつけた問題を再確認し、解答を変更するかどうかを判断する。ただし最初の直感で選んだ解答を変更すると正答率が下がる傾向があるため、明らかな誤りを見つけた場合以外は変更しない方が安全だ。第3に、計算問題(拘束時間・休息期間の計算など)は電卓(試験会場では使用不可のためメモ用紙で筆算)で再計算し、桁数のミスを防ぐ。

不合格だった場合の次回受験戦略

令和8年度第1回試験で不合格だった場合、次回は令和8年度第2回試験(例年3月実施)となる。申込期間は例年12月中旬から1月中旬までで、試験実施期間は3月上旬から下旬までとなる。つまり8月の試験から次回まで約7か月の間隔があるため、この期間をどう使うかが再挑戦の成否を分ける。

不合格の原因を特定するには、試験終了後に表示される「科目別正答率」を記録する。CBT方式では試験終了直後に画面に科目別の正答数が表示されるため、スマートフォンで写真を撮るか紙にメモする。たとえば「貨物自動車運送事業法関係」が8問中3問しか正解できていない場合、この科目に絞って法令集を読み直す。

再受験の学習計画は、苦手科目に時間を集中配分する。たとえば「労働基準法関係」の正答率が50%以下の場合、改善基準告示の条文を毎日1条ずつ読み、計算問題を10問以上解く。過去問10回分のうち「労働基準法関係」の問題だけを抜き出して50問作り、正答率90%以上になるまで繰り返す。この方法で苦手科目を克服すれば、次回の合格率は大幅に上がる。

科目免除を使わない受験者が陥りやすい時間不足

科目免除を使わない受験者(30問を90分で解答)の場合、試験時間の後半で時間が足りなくなる事例が多い。特に「実務上の知識及び能力」の事故報告書や運行指示書の問題は、問題文が長く(200〜300字)、選択肢も4つあるため、1問あたり5〜7分かかる。この科目が7問出るため、7問×6分=42分を消費し、残り48分で23問を解かなければならない計算になる。

時間不足を防ぐには、「知識問題を1問2分以内で解く」という時間感覚を身につける必要がある。過去問を解く際にストップウォッチで時間を測り、1問ごとに「2分以内」「2〜4分」「4分超」の3段階で記録する。2分以内で解ける問題が20問以上あれば、残り10問に70分を使える計算になり、時間切れのリスクは低い。逆に2分以内で解ける問題が15問以下の場合、知識の暗記が不足しているため、法令集の読み込みを優先する。

ベテラン運行管理者が試験で苦戦する理由

実務経験10年以上の運行管理者が試験で不合格になるケースは珍しくない。理由は3つある。第1に、実務での「運用」と試験での「条文の正確な暗記」が異なる点だ。たとえば実務では点呼記録を「Excel」や「紙の帳簿」で管理し、記載項目も「運転者名」「出発時刻」「帰着時刻」「走行距離」程度にとどまる事業者が多いが、貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条では「点呼を行った旨、報告を求め指示した事項、酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無」など9項目の記載が義務付けられている。実務で簡略化した運用をしていると、試験で「点呼記録に記載すべき事項はどれか」という問題が出たときに誤答する。

第2に、法改正への対応が遅れる点だ。令和6年4月施行の改正では、点呼記録の保存期間が「1年間」から「3年間」に延長されたが、実務では改正前の「1年間」で運用を続けている事業者も多い。試験では最新の法令に基づく正答を選ぶ必要があるため、改正前の知識で解答すると誤答になる。

第3に、「引っかけ問題」への対応が甘い点だ。試験では「〇〇の場合は△△しなければならない」という条文に対し、選択肢で「〇〇の場合は△△することができる」という微妙な言い換えをして引っかける問題が出る。実務経験が長いと「だいたい合っている」という感覚で解答してしまい、「しなければならない(義務)」と「することができる(任意)」の区別を見落とす。

試験後の合格発表と資格者証の交付手順

令和8年度第1回試験の合格発表は2026年9月24日で、運行管理者試験センターのウェブサイトで受験番号による合否照会ができる。合格者には後日「合格通知書」が郵送され、この通知書を持って各地方運輸局で「運行管理者資格者証」の交付申請を行う。

資格者証の交付申請には、合格通知書、写真1枚(縦3cm×横2.4cm、6か月以内撮影)、手数料1,650円(収入印紙)が必要だ。申請から交付までの期間は約2〜3週間で、郵送での申請も可能だが、窓口申請の方が早い。資格者証の有効期限はなく、一度取得すれば更新不要だが、紛失した場合は再交付申請(手数料2,350円)が必要になる。

資格者証を取得しても、すぐに運行管理者として選任されるわけではない。貨物自動車運送事業輸送安全規則第18条では、「運行管理者は、当該営業所に所属する事業用自動車の運行の管理に関する実務の経験その他の国土交通大臣が告示で定める要件を備える者のうちから選任しなければならない」と定められており、実務経験1年以上または国土交通大臣が認定する講習の修了が必要になる。つまり資格者証を持っているだけでは選任されず、実務経験または講習修了が別途求められる点に注意が必要だ。

次に何をするか――試験合格後の実務への移行

試験合格後、運行管理者として選任されると、点呼・運行指示書の作成・乗務記録の管理・事故報告書の作成など、実務が一気に増える。教科書では「点呼は1日3回(乗務前・乗務中・乗務後)実施する」と書かれているが、実際の現場では早朝4時出発のドライバー、深夜0時帰着のドライバーが混在し、運行管理者が24時間対応するのは物理的に不可能だ。

この矛盾を解消する方法は2つある。第1に、複数の運行管理者を交代制で配置し、早朝・日中・深夜の時間帯をカバーする体制を作る。貨物自動車運送事業輸送安全規則第18条では、「事業用自動車の数が29両まではそのうち5両ごとに1人、30両以上はそのうち30両ごとに1人」と最低人数が定められているが、これは「営業所に最低限配置すべき人数」であり、実際には時間帯ごとに運行管理者を配置する必要がある。たとえば30両規模の営業所で、早朝4時〜12時担当、日中12時〜20時担当、深夜20時〜翌朝4時担当の3人を配置すれば、24時間カバーできる。

第2に、IT点呼(映像と音声による遠隔点呼)や自動点呼(AI機器による点呼)を導入し、運行管理者が営業所に常駐しなくても点呼を実施できる体制を作る。令和4年4月の改正で、一定の条件を満たせばIT点呼が認められるようになったが、導入には「運行管理者が常駐する営業所とIT点呼を実施する営業所が同一事業者に属する」「Gマーク(安全性優良事業所)認定を受けている」などの条件がある。全日本トラック協会の調査(令和5年度)では、IT点呼の導入率は約18%にとどまり、中小事業者では費用対効果の観点から導入が進んでいないのが実態だ。

ベテラン運行管理者が現場でよく言うのは「試験に受かっただけでは仕事にならない。点呼記録1枚でも、現場では法令と違う書き方をする場面がある。その判断ができるようになるには、最低でも半年は先輩の横について覚えるしかない」という言葉だ。つまり試験合格は「スタート地点」であり、実務で一人前になるには別の努力が必要だということだ。