軽油とレギュラーガソリンの価格差は2026年6月時点で約20円/Lだが、燃費効率を含めたランニングコストでは走行距離と車両の特性が判断を左右する。

主要データ

  • 軽油価格(全国平均):158.8円/L(2026年6月14日時点、前週比+0.3円)
  • レギュラーガソリン価格(全国平均):180.2円/L(資源エネルギー庁「石油製品価格調査」2026年6月第2週)
  • 価格差:21.4円/L(2026年6月第2週時点)
  • トラック輸送量指数:208,550(国土交通省「自動車輸送統計調査」2025年11月)

あなたの状況で選ぶ燃料の判断基準

軽油とレギュラーの価格差を判断材料にする前に、自社の運行パターンと車両構成を整理する必要があり、同じ1Lあたりの差額であっても月間走行距離や積載率、給油拠点の条件が異なれば収支への効き方が変わるため、以下の3パターンでも見るべき判断軸は同一ではない。

パターン1:月間走行距離3,000km以上の定期便・幹線輸送

この規模の運行ではディーゼル車両(軽油使用)が選択肢の中心となることが多く、具体的な価格差やコスト差は車両の燃費特性・運行条件・給油拠点により異なるため、自社の実績データで試算する視点が欠かせない。燃費効率は車両の型式・積載率・運転方法に左右されるため、カタログ値ではなく実走行データで比較したいところであり、東名高速や関越自動車道を使った定期便では高速巡航時のトルク特性もディーゼルに有利に働きやすい。

パターン2:配送エリアが市街地中心で月間走行1,000km未満

近距離配送や市街地ルート配送では、燃料単価だけでなく車両の初期費用と維持費を総合的に見る必要があり、ディーゼル車とガソリン車の価格差やAdBlue(尿素水)の補充コストは車種・契約条件により異なるため、購入候補の見積もりを前提に比較するほうが実務に沿う。走行距離が少ないと燃料費の差額で初期投資を回収できるまでに5年以上かかる場合がある一方で、軽油価格は地域や給油所によっても変動するため、自社の主要給油拠点で実際の価格を確認してから判断したい。

パターン3:保有車両10台未満で複数の燃料種別を管理するリソースがない

小規模事業者では、燃料管理の手間が燃料単価の差以上に重くのしかかることがあり、軽油とレギュラーを混在させると給油カードの分別管理、燃料サーチャージの計算、車両ごとの燃費集計まで煩雑になっていく。Excel止まりの管理体制では1台ごとの燃料種別を取り違えて給油するミスも起きやすいため、この場合は主力車両の燃料種別に寄せつつ、給油拠点を2〜3カ所に絞る運用のほうが実務負荷を抑えやすい。

なぜ価格差だけでは判断できないのか

運輸業・郵便業の就業者数の推移(2026年1月~4月)(出典:厚生労働省「労働力調査」(2026年))
運輸業・郵便業の就業者数の推移(2026年1月~4月)

軽油とレギュラーの価格差21.4円/Lという数字は全国平均の一時点のスナップショットにすぎず、燃料コストの実態は車両の燃費特性・走行条件・税制・維持費が絡み合って決まるため、単純な単価比較だけでは現場の判断にそのまま結び付かない。

燃費効率の違いがランニングコストを逆転させる

ディーゼルエンジンは圧縮着火方式のため、ガソリンエンジン(火花点火)より熱効率が高い。全日本トラック協会「経営分析報告書」(令和4年度)によると、4トン車クラスでディーゼル車の平均燃費は6.8km/L、同クラスのガソリン車は4.9km/Lだった。1,000km走行した場合、ディーゼルは147L消費(23,344円)、ガソリンは204L消費(36,761円)となり、1Lあたりの価格差だけでなく消費量そのものの差が積み上がるため、結果として価格差以上に燃費差が効いてくることが見て取れる。

税制と価格構造の違い

軽油とレギュラーの価格差には税制の違いが大きく影響しており、レギュラーガソリンには揮発油税(本則28.7円/L)と地方揮発油税(5.2円/L)が課され、合計33.9円/Lの本体価格外負担がある一方、軽油には軽油引取税(32.1円/L)が課されるが、これは都道府県税であり事業用途によっては減免措置も視野に入る。資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(2026年6月第2週)の内訳を見ると、レギュラーは税・諸経費が小売価格の約45%を占めるのに対し、軽油は約35%にとどまっており、2026年6月第2週時点のレギュラーガソリン全国平均180.2円/Lのうち税・諸経費が約81円(約45%)を占めるのに対し、軽油158.8円/Lでは約56円(約35%)にとどまる。

維持費と車両寿命の違い

ディーゼル車とガソリン車の耐久性や走行可能距離は、車種・メンテナンス状況・使用条件により大きく異なるため、一律の基準で比較するのは難しく、車両寿命やメンテナンスコストは購入候補ごとに確認しておく必要がある。いすゞフォワードや日野レンジャーといった中型ディーゼルトラックは、10年以上の使用実績を持つ車両が中古市場でも高値で取引される一方で、ディーゼル車ではDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)の洗浄・交換コストやAdBlueの補充コストが車種や契約内容によって変わるため、購入前にメーカー公式情報や整備事業者への照会まで済ませておきたい。

軽油・レギュラー価格差の推移と変動要因

2026年6月14日時点で軽油は全国平均158.8円/L(前週比+0.3円、1週連続上昇)となっており、この価格水準は原油価格の国際相場・為替レート・国内需給・税制の4要素で決まるため、足元の価格だけを見てもその先の動向までは読み切りにくい。

過去1年間の価格推移

資源エネルギー庁「石油製品価格調査」によると、軽油価格は2025年7月に146.2円/Lまで下落した後、秋口から上昇に転じ、2026年1月には162.5円/Lのピークを記録した。レギュラーガソリンも同様の動きを示し、価格差は19円〜24円/Lの範囲で推移している。この変動幅は運送会社の燃料サーチャージ設定にも影響を与え、国土交通省「標準的運賃」の燃料サーチャージ算定式では基準価格から±10%変動した時点で運賃改定協議の根拠とする目安が示されているうえ、国土交通省「自動車輸送統計調査」によると営業用トラック輸送トン数は2025年6月203,901千トン、7月212,599千トン、11月208,550千トンと推移しており、輸送需要が高水準を維持する局面では燃料価格の変動が収支に与える影響も小さくない。

地域別の価格差

軽油価格の地域差は、製油所からの輸送距離・競合給油所の密度・地域ごとの需給バランスによって変動するため、具体的な価格差は資源エネルギー庁「石油製品価格調査」の都道府県別データで確認したい。東京湾岸エリアや横浜港本牧のような製油所・油槽所に近い地域では輸送コストが低く抑えられるため小売価格も安くなる傾向があるが、逆に内陸部や離島では輸送コスト分が上乗せされる。

セルフ給油所とフルサービス給油所の価格差

セルフスタンドはフルサービスに比べて人件費が低い分、価格が抑えられる傾向がある。ただし、大型トラックの給油はセルフでは物理的に困難な場合が多く、ノズルの形状や給油レーンの幅が対応していないスタンドもあるため、フルサービスの商用車専用レーンを持つ給油所では法人契約による値引きや給油カードのポイント還元も含めて比較しないと、表示価格だけでは実際の有利不利を見誤りやすい。

燃料コスト試算の実務手順

営業用トラック輸送トン数の推移(2025年)(出典:国土交通省「自動車輸送統計調査」(2025年))
営業用トラック輸送トン数の推移(2025年)

価格差を自社の収支に落とし込むには、単価の比較だけで終わらせず、走行距離・実燃費・契約単価・車両更新の条件までつないで確認する必要があるため、以下の3ステップで試算を進めると整理しやすい。

ステップ1:月間走行距離と燃費の実績を集計する

運行管理者が持つ日報や配車記録から、車両ごとの月間走行距離と給油量を抽出する。Excelでの集計なら、車両番号・日付・走行距離・給油量の4列を用意し、ピボットテーブルで月別・車両別に集計すれば実燃費が算出できる。教科書ではカタログ燃費をもとに試算するとされるが、現場では積載率・渋滞頻度・ドライバーの運転癖で燃費が20%以上変動するため、最低3カ月分の実績データを使うのが前提であり、厚生労働省「労働力調査」によると運輸業・郵便業の就業者数は2026年1月350万人、2月354万人、3月361万人、4月353万人と推移していることからも、人手不足が続く中では燃費効率の良い車両への切り替えが人員配置の見直しと結び付く場面がある。

ステップ2:燃料単価を地域別・給油所別に整理する

資源エネルギー庁「石油製品価格調査」は都道府県別の週次データを公表しているが、これはあくまで平均値であり、自社が実際に契約している給油所の単価とは一致しないことがある。法人契約では月間給油量に応じた段階的な値引きや、給油カード会社のキャッシュバックが適用されるため、平均価格をそのまま当てはめるのではなく、契約先給油所の請求書から実際の支払単価を拾っていくほうが試算の精度は上がる。

ステップ3:車両の残存耐用年数と買い替えコストを加味する

燃料費だけを見て車両を入れ替えるのは危うく、ディーゼル車とガソリン車の価格差や初期投資の回収期間は車種・契約条件・運行パターンにより大きく異なるため、購入を検討する車両メーカーや販売店への見積もり依頼と、自社の実走行データでの試算を組み合わせる必要がある。全日本トラック協会の調査では中小運送会社の車両保有期間に一定の傾向が見られるものの、個別判断では自社の資金計画・運行パターン・整備体制まで含めて検討することになる。

よくある失敗パターンと対処法

価格差だけを見て判断すると、導入時の見込みと実運用の条件がずれやすく、燃料費の想定違いだけでなく管理負荷や故障リスクまで表面化するため、現場では次のような失敗が起きやすい。

失敗例1:カタログ燃費で試算して導入後に赤字化

カタログ燃費と実燃費の乖離は、配送エリア・積載率・運転方法によって大きく変動するため、車両導入前には同型車両を使用している同業他社への聞き取りや、試乗による実走行燃費の確認まで進めておきたい。ディーゼルはアイドリング時の燃料消費がガソリンより多く、渋滞の多いルートでは燃費メリットが打ち消されることもある。

失敗例2:AdBlueの補充コストを見落とす

ディーゼル車の排ガス浄化装置(SCR)はAdBlue(尿素水)を消費する。AdBlueの消費量・価格は車種や購入先により異なるため、車両購入時にメーカーや整備事業者へ確認しておきたいが、小規模事業者ではAdBlueの在庫管理や補充拠点の確保そのものが負担になり、結局はフルサービス給油所で割高な価格で購入する例も見られる。

失敗例3:燃料種別を間違えて給油し車両故障

ガソリン車に軽油を給油、または逆のミスは、エンジンの致命的な故障を引き起こす。誤給油による修理費用は車種や損傷の程度により異なるため、万一の際は速やかに整備事業者へ相談する必要があり、複数の燃料種別を扱う事業者では給油口に色別のステッカーを貼る、給油カードを燃料種別ごとに分けるといった物理的な誤給油防止策までセットで運用したい。

価格差以外に見るべき判断要素

軽油とレギュラーの選択は、価格差だけでなく車両用途、規制対応、売却時の価値まで含めて総合的に評価する必要があり、導入時の安さと保有期間全体の負担が一致するとは限らないため、判断材料は複数の軸で確認しておくほうがよい。

車両の用途と運行パターン

高速道路を使った幹線輸送や、1日200km以上走る定期便ではディーゼルの燃費効率と耐久性が活きやすい。一方、宅配便の集配や市街地のルート配送では頻繁な停止・発進が多く、ディーゼルのトルク特性よりもガソリン車の軽快な加速が有利に働く場合もあるため、国土交通省「自動車輸送統計調査」(2025年11月)でトラック輸送量指数が208,550と高水準を維持している状況下でも、運行効率の最適化は燃料選択と切り離せない課題となっている。

環境規制と排ガス基準

ディーゼル車は排ガス規制(ポスト新長期規制・平成28年排出ガス規制)への対応が必須であり、DPFやSCRといった後処理装置のメンテナンスコストがかかる一方、ガソリン車は触媒の交換頻度が低く、排ガス関連の維持費は相対的に安い傾向にある。ただし、東京都や神奈川県など一部自治体では古いディーゼル車の乗り入れ規制があるため、中古車導入時には規制適合状況まで確認しておきたい。

中古車市場での残存価値

ディーゼル車は耐久性が高く、走行距離が多くても中古市場での需要がある。いすゞフォワード、日野レンジャー、三菱ふそうファイターといった定番車種の中古市場での残存価値は、年式・走行距離・整備履歴により大きく異なるため、車両入れ替え時には中古車査定業者や販売店への確認を進めたい。一方、ガソリン車は走行距離が20万kmを超えると査定額が急落するため、車両入れ替えのサイクルまで含めて見ると下取り価格の差も総コストに響いてくる。

燃料サーチャージと価格転嫁の実務

軽油価格の変動を荷主に転嫁する仕組みが燃料サーチャージであり、国土交通省「標準的運賃」では燃料費の変動を運賃に反映させる算定式が示されているものの、実際の価格転嫁は荷主との契約内容によって進み方が変わる。

燃料サーチャージの算定式

燃料サーチャージの具体的な基準価格・変動率・運賃改定のタイミングは、荷主との契約内容や業界慣行により異なるため、国土交通省「標準的運賃」の算定式や全日本トラック協会の支援ツールを参照しつつ、自社の契約条件に応じた設計に落とし込む必要がある。ただし、この仕組みは荷主の理解と合意が前提であり、中小運送会社では価格転嫁が思うように進まない実態もうかがえる。

価格転嫁の交渉手順

燃料費の上昇を理由に運賃改定を申し入れる際は、資源エネルギー庁の公表データや自社の燃料費実績を根拠資料として提示する。口頭での交渉だけでは荷主の理解を得にくいため、Excelで作成した燃料費推移グラフや車両別の燃料消費量を示す集計表を用意するのが有効であり、全日本トラック協会の各都道府県支部では価格交渉の支援ツールや書式例を提供している場合もある。

次にやるべきこと:自社データでの試算と給油拠点の見直し

軽油とレギュラーの価格差を判断材料にする前に、自社の実績データを3カ月分集計し、車両ごとの実燃費と月間燃料費を可視化する必要があり、この数字が出れば価格差21.4円/Lが自社の収支にどれだけ影響するかを具体的に把握しやすくなる。

給油拠点は、価格だけでなく法人契約の値引き条件・給油カードのポイント還元率・AdBlue補充の可否を総合的に評価したうえで、拠点を2〜3カ所に絞るのが望ましく、複数の給油所を細かく使い分けると管理負荷が上がるだけでなく誤給油のリスクも高まる。

車両の買い替えや燃料種別の変更を検討する場合は、車種ごとの初期投資・維持費・残存価値を購入先や整備事業者へ確認したうえで総保有コスト(TCO)を試算し、自社の資金計画に照らして判断したい。燃料費だけで結論を急ぐのではなく、運行パターン・環境規制・ドライバーの負担も加味しながら、必要に応じて行政書士や税理士へ相談する進め方が現実的である。

燃料価格は週単位で変動するため、最新の価格動向や自社への影響については資源エネルギー庁「石油製品価格調査」を定期的に確認し、価格が基準から一定以上乖離したら荷主との運賃改定協議を開始できるよう準備しておきたい。この動きが遅れると燃料費上昇分を自社が抱え込む形になって営業利益を圧迫するため、価格差の把握と転嫁交渉は運行管理者の日常業務の中に組み込んでおく必要がある。