軽油価格は運行原価の1〜2割を占め、価格変動が利益を圧迫する。燃料サーチャージと運賃交渉の組み合わせで回収の仕組みを作る。
主要データ
- 軽油小売価格(全国平均):158.8円/L(資源エネルギー庁、2026年6月1日時点)
- 軽油小売価格(全国平均):158.5円/L(資源エネルギー庁、2026年5月25日時点)
- 営業用トラック輸送トン数:212,599千トン(e-Stat自動車輸送統計、2025年7月)
燃料費の話で最初に躓くのは「ガソリンと軽油を混同する」失敗だ
事業用トラックの燃料は軽油である。ところが、営業所の誰かが車を出してコンビニで物を買ったついでに「ついでだから」と自家用車向けのレギュラーガソリンを給油してしまい、庫内の燃料管理表と実際の給油量が合わなくなった現場が年に数件あるうえ、軽油とガソリンの違いは燃料税と車両構造の両面で大きいため、ディーゼル車にガソリンを入れてしまうとエンジン故障の原因になる。
軽油の小売価格は資源エネルギー庁の石油製品価格調査で毎週公表されており、2026年6月1日時点で全国平均158.8円/Lとなっている。前週比で+0.3円であり、1週連続の上昇となった。価格は地域や給油所の形態(セルフ・フルサービス)で異なるが、全国平均を基準にして自社の仕入れ単価と比較すると、調達経路の見直しが必要かどうかが見えてくる。
ガソリンと軽油の違いは燃料税の構造にある。ガソリンは揮発油税と地方揮発油税が課税され、小売価格に占める税負担が重い一方で、軽油は軽油引取税のみで税額が異なるため、単純に「リッターあたり何円」で比較してもコスト構造の違いを見落としやすい。
燃料費を運賃に転嫁する手順は「サーチャージ導入+原価の見える化」の2段階だ
軽油価格の変動を荷主に転嫁する仕組みは燃料サーチャージと呼ばれ、これは「基準価格(契約時の軽油価格)」と「運行時の実勢価格」の差額を運賃に上乗せする方法であり、宅配大手や特別積合の大手事業者が先行して導入している一方で、中小事業者が同じ仕組みを使う場合は荷主との関係だけでなく事務処理の負担も見ながら段取りを組む必要があるため、国土交通省が2020年に公表した「標準的な運賃の告示について」の関連資料でも、燃料サーチャージの算定要素として基準価格・燃費・走行距離の3要素を明示し、契約時にこれらを具体的に定めることを推奨している。
基準価格と連動指標を決める
最初に「基準価格」を決める。基準価格は契約時点の軽油価格を資源エネルギー庁の石油製品価格調査から引用するのが定石であり、例として2026年6月1日時点の全国平均158.8円/Lを基準とする。
次に連動指標を決める。連動指標とは、実際の運行時に参照する軽油価格の出典のことであり、資源エネルギー庁の石油製品価格調査は毎週月曜公表で都道府県別にも数値が出るため、「全国平均を採用するか、自社の主要運行地域の都道府県価格を採用するか」を契約書に明記しておきたい。
サーチャージの計算式と改定サイクルを合意する
サーチャージの計算式は運行条件により異なるため、基準価格・自社の標準燃費・運行距離の3要素を荷主と協議のうえ具体的に定める必要がある。計算式の設定にあたっては、国土交通省「標準的な運賃の告示について」の関連資料を参照し、自社の実績燃費と走行距離を反映した形で合意することが望ましい。
改定サイクルは事業者と荷主の事務負担、価格変動の頻度を考慮して月次・四半期・半期のいずれかを選択し、改定時期と通知タイミングもあわせて決める必要があるため、たとえば四半期初月の1日に前四半期平均を集計し、当月15日付で運賃改定通知を発行するといった流れを契約で定めておく。
原価計算の根拠を開示する
荷主がサーチャージを受け入れるかどうかは、原価の見える化にかかっている。具体的には次の資料を用意する。
- 車両別の年間走行距離と実燃費の実績(デジタコや運行記録計から集計)
- 給油所の領収書と燃料費の月次推移表(会計ソフトまたはExcelで作成)
- 運行距離あたりの燃料費原価(片道原価の内訳として提示)
運行管理者が「燃費7km/L」と主張しても、実績データが無ければ荷主は納得しないため、運行記録計やデジタコのデータから直近3ヶ月の平均燃費を算出し、単なる感覚値ではなく根拠として示すことが求められる。
軽油とガソリンの価格差は税制の違いで生まれる
軽油とガソリンの小売価格には常に差があり、その要因は燃料税の構造にある。税制上、ガソリンの方が税負担が重い傾向にあるため小売価格でも軽油より高くなりやすく、ディーゼル車を保有する事業者にとっては、軽油の方が燃料費の単価を抑えやすいという構造が見て取れる。
ガソリン車とディーゼル車の燃料費比較は、燃費と車両本体価格の両方で判断する。ディーゼル車は本体価格が高い一方で、走行距離が長ければ燃料費で回収しやすく、年間走行距離5万km超の運行が続く場合は、軽油価格が安定している限りディーゼル車の方がトータルコストは低くなる傾向にある。
燃料費の変動を運行計画に組み込む道具は「片道原価」と「実車率」だ
軽油価格が上がっても運賃改定が間に合わない時期は、運行計画の見直しで原価を抑える必要があり、その見直しの軸になるのが片道原価と実車率である。全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業(現況と課題 2024年度版)」によれば、営業用トラックの平均実車率は約40〜50%台で推移しているため、復路の帰り荷を確保して実車率を高めることが燃料費削減の重要な手段となっている。
片道原価の内訳を洗い出す
片道原価は「燃料費+人件費+高速料金+その他経費」で構成される。このうち燃料費は「片道走行距離÷燃費×軽油価格」で算出し、例として東京港大井ふ頭から関西方面への定期便で片道500kmを走る場合、燃費を7km/Lとすると燃料費は(500km÷7km/L)×158.8円/L=約11,343円となる。
高速料金は時間帯によってETC割引が使え、深夜割引・休日割引・平日朝夕割引を組み合わせて運行計画に反映すると、片道原価を数千円単位で圧縮できる。運行管理者がダイヤ編成を組む際は、料金所の通過時刻を割引適用時間帯に合わせるだけでも原価が変わってくる。
実車率を上げて空車走行を減らす
実車率は「実際に荷物を積んで走った距離÷総走行距離」で計算する。往路で荷物を運んでも復路が空車なら実車率は50%であり、燃料費は往復分かかるため、帰り荷を確保できれば実車率が上がり、往復の売上で燃料費を回収しやすくなる。
帰り荷の確保手段は求貨求車システムと荷主ネットワークの2つがあり、求貨求車システムは運送事業者と荷主をマッチングする仕組みで、復路の出発地と行き先を登録すると候補案件が表示される。ただし、マッチングが成立しても荷主との信頼関係が無ければ継続受注にはつながりにくく、一方で荷主ネットワークは既存荷主の紹介や業界団体の懇談会で構築する形が多いため、安定した帰り荷の確保には時間がかかる。
燃料価格の変動を吸収する前提条件は「契約書の条項」だ
サーチャージ導入の前提は、契約書に燃料費転嫁の条項があるかどうかである。条項が無い契約でサーチャージを一方的に請求すると、荷主から契約違反として拒否される可能性が高い。
運送契約書に燃料費転嫁条項を入れる
燃料費転嫁条項は「燃料価格が一定幅以上変動した場合、運賃を見直すことができる」旨を明記し、運用時に解釈のずれが出ないよう、基準価格の出典や通知期限まで含めて具体化する。具体的には次の要素を盛り込む。
- 基準価格の設定方法(資源エネルギー庁の公表価格を採用する旨)
- 改定の閾値(条件は荷主との協議により定める)
- 改定の通知期限(例:改定日の15日前までに書面で通知)
- 協議の手続き(見直し幅について荷主・運送事業者双方が協議する旨)
契約書の文言は行政書士に相談して作成する。法的な有効性を確保するためであり、荷主の法務部門との協議も必要になってくる。
標準的な運賃告示を交渉材料にする
国土交通省が2020年に告示した「標準的な運賃」は、燃料費・人件費・高速料金などの原価を積み上げて算出された運賃水準を示している。告示そのものは届出義務や強制力を持たないが、荷主交渉の場では「国が示した原価計算の根拠」として提示できる資料となっている。
標準的な運賃の計算方法は距離制運賃と時間制運賃の2種類があり、自社の運行実態に合わせていずれかを採用する。具体的な計算式は国土交通省の告示を参照し、自社の燃費・軽油価格・走行距離などの実績を当てはめて試算すると、交渉時の説明に一貫性を持たせやすい。
現場で燃料費を管理するコツは「車両ごとの燃費実績を見える化する」ことだ
燃料費の削減は燃費改善から始まるが、燃費改善の前提は車両ごとの燃費実績を把握することであり、実績を把握せず「うちの車は大体7km/Lくらい」で管理していると、燃費が悪化しても気づきにくい。
デジタコの燃費データを月次で集計する
デジタコ(デジタル式運行記録計)は走行距離・速度・エンジン回転数を記録し、燃費を自動計算する機能を持つ機種が多い。データはSDカードやクラウド経由で取り出せるため、月次で車両別に集計し、前月比・前年同月比で燃費の変化を確認する。
燃費が悪化する原因は次の3つに絞られる。
- 車両整備の遅れ(エアフィルター目詰まり・タイヤ空気圧不足)
- 運転方法の問題(急加速・急減速の多発)
- 積載率の低下(空車または軽積載での走行が増えた)
デジタコで燃費が悪化した車両を特定したら、整備記録と運行実績を突き合わせて原因を切り分ける必要があり、整備不良なら車検とは別に中間点検を入れ、運転方法が原因なら乗務員に対してエコドライブ講習を実施する流れになる。
給油所を固定して単価の推移を追う
給油所によって軽油の小売価格は異なる。複数の給油所を使い分けていると価格変動の傾向が見えにくくなるため、可能な限り給油所を固定し、月次で「給油量×単価」の推移をExcelなどで記録したい。
給油所の選定基準は単価の安さだけではない。次の要素も考慮する。
- 営業所・配送拠点からの距離(空車で遠回りして給油に行くと燃料費が相殺される)
- 給油時間帯の制約(深夜給油が必要な運行の場合は24時間営業か確認)
- 法人契約の可否(月次請求・燃料カード発行の有無)
大型車の燃料タンクは200L前後あり、1回の給油で3万円を超えることもあるため、法人契約で燃料カードを発行してもらえば、現金管理の手間が減るのみならず、給油履歴も電子データで残せる。
燃料費の月次レポートを荷主に提出する
燃料費の変動を荷主と共有することで、サーチャージ導入の理解を得やすくなる。月次レポートには次の項目を含める。
- 当月の平均軽油価格(資源エネルギー庁の公表値を引用)
- 前月比・前年同月比の価格変動幅
- 車両別の燃費実績(平均値と最高値・最低値)
- 燃料費の月次推移グラフ(過去6ヶ月分を折れ線で表示)
レポートは1枚のA4シートにまとめ、運賃改定の協議がある月には参考資料として添付する。数値だけでなく、燃費改善の取り組みであるエコドライブ講習の実施回数や整備頻度の増加なども記載すると、燃料費削減に向けた姿勢がより伝わりやすい。
燃料費が原価に占める割合を「人件費・高速料金・減価償却費」と並べて見る
燃料費は運行原価の中で変動費の筆頭だが、原価全体の中での位置付けを把握しないと削減効果が読みにくいため、まずは原価の内訳を次の5項目に分けて管理する。
- 人件費(運転者の給与・法定福利費・賞与)
- 燃料費(軽油・尿素水)
- 高速料金(ETC割引適用後の実績)
- 車両費(減価償却費・自動車税・保険料・車検整備費)
- その他経費(庸車費・荷役作業料・事務所家賃)
燃料費は運行原価の一定割合を占めるとされるが、業態により幅がある。長距離定期便で高速道路を多用する場合は高速料金の比重が上がる一方で、燃料費の割合は相対的に下がり、近距離配送で一般道を使う場合は燃料費と人件費が原価の大半を占める。
全日本トラック協会の経営分析報告書(各年度版)では、営業用トラック事業者の費目別原価構成比が公表されている。自社の原価構成と業界平均を比較すると、燃料費以外にも改善余地がある費目が見えてくるうえ、全日本トラック協会の「経営分析報告書(令和4年度版)」によれば、営業用トラック事業者の燃料油脂費は営業費用の約15〜18%を占めており、人件費に次ぐ大きな費目となっている。
荷主交渉の前に準備するのは「運行実績と原価の突き合わせ表」だ
燃料費転嫁の交渉で荷主が求めるのは、具体的な根拠である。「軽油が上がったから運賃も上げてほしい」だけでは通りにくいため、交渉前に次の資料を用意する。
荷主ごとの運行実績表
荷主ごとに次の項目を集計する。
- 月間運行回数
- 総走行距離(片道距離×往復回数)
- 実車率(帰り荷の有無を反映)
- 積載率(最大積載量に対する実積載量の割合)
運行実績は運行管理者が作成する運行日報から集計するが、手作業で集計すると時間がかかるため、デジタコのデータをCSV形式で出力し、Excelで月次集計表を作る方法が実務に合っている。
原価の突き合わせ表
荷主ごとの原価を次の手順で計算する。
- 総走行距離に基づく燃料費(走行距離÷燃費×軽油価格)
- 運行回数に基づく人件費(運転者の1運行あたり人件費×回数)
- 高速料金の実績(ETC利用明細から荷主ごとに按分)
- 車両費の按分(年間減価償却費・保険料を運行回数で割る)
原価の合計と現行運賃を比較し、差額である利益または赤字を算出する。差額がマイナスとなる案件は、赤字案件として運賃改定の対象に位置付ける。
改定後の運賃水準と根拠
改定後の運賃は「原価+適正利益」で設定する。適正利益の水準は事業者の経営状況・地域・運行内容により異なるため、全日本トラック協会の経営分析報告書などを参考に自社の目標値を設定し、荷主交渉では「原価割れを解消し、持続可能な運行体制を維持するため」という説明を添える。
改定の根拠として、次の公的データを引用する。
- 資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(軽油価格の直近推移)
- 国土交通省「標準的な運賃」(距離制・時間制の計算例)
- 全日本トラック協会「経営分析報告書」(費目別原価構成比)
これらのデータを1枚のレポートにまとめ、交渉の場で提示する。荷主の購買部門や物流担当者は社内稟議を通す必要があるため、稟議に使える形式であるA4サイズ・数値の出典明記・グラフ添付を意識して資料を整えることが重要になる。
燃料価格が乱高下した時の対処は「基準価格の見直しサイクル」を短くすることだ
軽油価格が短期間で大きく変動する局面では、四半期改定では間に合わないことがあるため、基準価格の見直しサイクルを月次または隔月に変更し、荷主と合意しておく必要がある。
見直しサイクルを短くするには、次の準備が要る。
- 資源エネルギー庁の週次データを自動取得するExcelマクロまたはスクリプトの作成
- 燃料費の月次集計を自動化し、経理担当者の作業負担を減らす
- 荷主への通知フォーマットを定型化し、改定のたびに資料を作り直さない仕組みにする
月次改定を続けると、荷主側の事務負担も増える一方で、価格変動の反映は早くなるため、運賃改定の通知書は簡潔な1枚シートにまとめ、改定額の算出根拠である基準価格・走行距離・燃費の関係を明記して、荷主の経理部門が社内承認を取りやすい形にしておきたい。
燃料費管理で見落とされるのは「尿素水のコスト」だ
ディーゼル車の排ガス規制対応で、尿素SCRシステムを搭載した車両が増えている。尿素SCRは排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を尿素水で還元して無害化する仕組みであり、通常の軽油管理とは別に、尿素水の補充も定期的に必要になる。
尿素水の消費量は軽油の消費量の数%程度で、金額としては燃料費全体の中では小さい。だが、尿素水が切れるとエンジンの出力制限がかかり、最悪の場合は走行不能になるため、補充の頻度は車種と走行条件で変わることを踏まえつつ、デジタコや車両の警告灯で尿素水の残量を確認し、給油のタイミングで同時補充するのが現実的な運用となる。
尿素水は給油所で扱っている場合と、カー用品店やトラック用品店で購入する場合がある。補充の手間を減らすには、尿素水も取り扱っている給油所を選ぶと運用しやすい。
次にやるべきは「荷主ごとの片道原価を試算して赤字案件を洗い出す」作業だ
燃料費の管理ができるようになったら、次は荷主ごとの採算を把握する段階に入るため、荷主ごとの片道原価を試算し、現行運賃と比較して赤字案件を洗い出す。赤字案件が複数ある場合は、影響の大きい案件から優先順位をつけて運賃改定交渉を進める。
優先順位の判断基準は次の3つだ。
- 赤字幅の大きさ(1運行あたりの赤字額が大きい案件から交渉)
- 運行頻度(月間運行回数が多い案件ほど累積赤字が膨らむ)
- 荷主との関係性(長期取引の荷主は交渉がしやすく、新規荷主は慎重に進める)
赤字案件の運賃改定が難しい場合、次の選択肢を検討する。
- 帰り荷の確保(実車率を上げて往復の売上で原価を回収)
- 混載便への切り替え(他の荷主の貨物と混載して積載率を上げる)
- 庸車の活用(自社車両の空き時間を減らし、固定費を圧縮)
運賃改定が成立しなければ、最終的には案件の撤退も選択肢に入る。赤字案件を続けると他の黒字案件の利益を食い潰し、会社全体の収益が悪化するため、撤退の判断は経営者が最終的に下す一方で、運行管理者は原価データを整備して経営判断の材料を提供する役割を担う。
関連記事: 庸車代の適正化を実現する選定基準・契約・サーチャージ・支払条件の設定方法
関連記事: 軽油価格の推移はどう読む?週次データの見方と運送経営への活かし方
この分野の統計データは「運送業のいまの数字」で、グラフとテーブルで一覧できます。
この分野の統計データは「運送業のいまの数字」で、グラフとテーブルで一覧できます。



