CLO 義務化とは、2025年4月1日に施行された改正物流効率化法で、国土交通大臣が定めた判断基準に基づき、物流事業者と荷主が協力してCO2削減に努める義務(努力義務)が明文化されたこと、および2026年4月1日から一定規模以上の「特定事業者」に対して中長期計画の作成・定期報告が義務づけられる制度の総称を指す。
主要データ
- 軽油価格(全国平均):158.8円/L(2026年6月9日時点、前週比+0.3円)
- 営業用トラックのCO2排出量:5,710万トン(国土交通省「運輸部門のCO2排出量」令和4年度)
- 物流効率化法 第一段階(努力義務)施行日:2025年4月1日(国土交通省告示)
- 物流効率化法 第二段階(特定事業者規制)施行日:2026年4月1日(国土交通省告示)
「物流効率化法が改正されて、うちも何か提出書類が増えるんじゃないか」と心配する中小運送会社の社長は多いが、2026年6月現在、実際に報告義務が発生するのは「特定事業者」に該当する一部の大規模事業者だけであり、多くの中小運送会社は努力義務のみにとどまる。
結論からいえば、CLO義務化は「全員が計画書を出す義務」ではなく、「全員が努力義務」である一方で「一部が計画義務」を負う二段構えになっており、ここを混同すると現場の運行管理者が無駄な社内資料作成に時間を取られるため、正確な適用範囲を押さえておく必要がある。
「CLO」とは何か――環境負荷の"見える化"指標
CLOは「Corporate Logistics Operation」の略ではなく、環境用語としては「CO2 Logistics Optimization」を指す文脈が多いが、国土交通省の公式文書では「CO2削減」と「物流効率化」の両面を包含する概念として扱われており、統一的な英語表記は定まっていないため、現場では略称だけが先行して理解され、言葉の定義よりも制度上どこまで対応すべきかが先に問われる状況になっている。
実務上のポイントとして、物流事業者が把握すべきは以下の3指標だ。
- CO2排出量(トン-CO2):燃料使用量から算出する絶対量。国土交通省「運輸部門のCO2排出量」(令和4年度)によると、営業用トラックの年間排出量は約5,710万トン。
- 輸送効率(トンキロ/L):1リットルの軽油で何トン・キロ運べたかを示す燃費効率。デジタコや運行記録から算出する。
- 実車率・積載率:空車走行距離の割合。全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業」(令和5年版)では、実車率は約40%台前半で推移している。
この3指標を定期的に記録することが努力義務の中心だが、記録フォーマットは各社の運行管理システムに依存しており、国交省は統一様式を示していないため、同じ努力義務の対象であっても現場ごとの運用負担にはかなりの差が生じている。
なぜ「CLO 義務化」と呼ばれるのか――2025年・2026年の二段階施行
改正物流効率化法は2024年6月に公布され、2025年4月1日に第一段階、2026年4月1日に第二段階が施行されるため、制度の開始時点と報告義務の開始時点が一致しておらず、努力義務だけが先に始まる構造であることを見落とすと、まだ提出不要の事業者まで過剰対応してしまいかねない。
2025年4月1日施行(第一段階)――全事業者の努力義務
すべての物流事業者・荷主に対し、国土交通大臣が定めた「判断基準」に基づく努力義務が課せられた。具体的には以下の3項目だ。
- 積載効率の向上(空車走行の削減、混載の促進)
- 荷待ち時間・荷役等時間の短縮(運送契約における待機時間の明示)
- CO2排出量の把握と削減目標の設定(任意)
努力義務に罰則はなく、運送事業法の許可更新にも直接影響しないが、Gマーク(安全性優良事業所認定)の審査項目にはすでに「環境配慮」が含まれているため、制度上は任意に近く見えても、今後の配点調整を通じて間接的に反映される可能性がある。
2026年4月1日施行(第二段階)――特定事業者の義務
一定規模以上の物流事業者・荷主は「特定事業者」に指定され、以下が義務化される。
- 中長期計画(5年程度)の作成と国土交通大臣への提出
- 年次報告書の提出(計画の進捗状況、CO2排出量の実績値)
- 勧告・公表制度(計画が不十分な場合、国交省が改善勧告し、従わない場合は社名公表)
「一定規模以上」の具体的な基準は、国土交通省令で「前年度の貨物輸送量が年間3,000万トンキロ以上」(貨物運送事業者の場合)または「前年度の発注輸送量が年間2,000万トンキロ以上」(荷主の場合)と定められており、保有台数10〜50台規模の中小運送会社の大半はこの基準を下回る。
たとえば、保有台数30台で平均積載2トン、年間走行距離が1台あたり5万キロの事業者の場合、年間輸送量は約300万トンキロ(30台×2トン×5万km)となって特定事業者の基準を大きく下回り、神奈川県や埼玉県のトラック協会でも、会員事業者の大半は基準外との見方が多い。
現場での使われ方――運行管理者が押さえるべき3点
努力義務が施行されても、日々の点呼や運行計画が劇的に変わるわけではないが、記録の取り方や荷主とのやり取り、車両更新の優先順位には確実に影響が及ぶため、以下の3点は運行管理者の判断業務に直結する。
①デジタコ・運行記録の記載項目追加
デジタコメーカー各社は、CO2排出量を自動計算する機能を2025年春以降に順次実装しており、日報出力時に「本日のCO2排出量:23.5kg」といった表示が追加されるが、現状ではメーカーごとに算出方法が異なるため、全日本トラック協会が統一計算式を示していても任意のガイドラインにとどまる。
教科書では「デジタコで一元管理できる」とされるが、実際の現場では古い機種が混在しており、手計算で補完している運送会社も多く、リースアップの時期に合わせて更新するのが現実的である一方、補助金が使える機種は年度ごとに変わるため、国土交通省「トラック輸送における総合安全対策」の最新公募情報を確認することが前提になる。
②荷待ち時間の契約明示――標準的運賃との関係
改正物流効率化法は、運送契約書に「荷待ち時間・荷役等時間」を明記する努力義務を定めており、これは2024年3月に改正された「標準的運賃」制度と連動するが、標準的運賃では荷役の対価(積込・取卸)を時間制または件数制で別途請求できる仕組みが明示されているにもかかわらず、中小運送会社では「運賃に含む」扱いが依然として多い。
東京港大井ふ頭や横浜港本牧では、バース予約制が定着したことで荷待ち時間は短縮された一方で、内陸の食品倉庫や建材センターでは依然として1時間半〜2時間の待機が常態化しており、標準的運賃を届け出ている事業者はこの待機時間を「附帯業務」として別建てで請求できるが、実際に請求している事例は全体の3割に満たない(全日本トラック協会ヒアリング調査、令和5年度)。
③混載・共同配送の検討――荷主との交渉材料
積載効率の向上は、荷主との交渉なしには実現しにくく、とくに帰り便の確保は発地・着地が異なる複数荷主との調整を要するため、配車担当だけでなく営業や荷主側の物流担当も含めた調整が必要になってくる。
ただし現場では、混載による破損・遅延リスクを懸念する荷主が多く、「専用便」を指定する契約も根強いため、CLO義務化を根拠に「混載可能なら運賃を下げる」と提案する運送会社もあるが、荷主によっては「安全性より価格」と受け取られて逆効果になることがあり、実車率40%台の低迷が続く背景には、こうした契約慣行がある。
特定事業者の実務――計画書の記載内容
特定事業者に該当する場合、2026年4月1日以降、初回の中長期計画を提出する期限は「施行日から6ヶ月以内」とされている。すなわち2026年9月末が最初の締め切りだ。
計画書の記載項目は国土交通省令で定められており、以下が必須となる。
- 基準年度(直近年度)のCO2排出量(トン-CO2)
- 目標年度(5年後)の削減目標値(削減率または絶対量)
- 目標達成のための取り組み内容(設備投資、運行改善、荷主との協議等)
- 実績の測定・報告体制(担当部署、記録方法)
削減目標の「妥当性」は国交省が審査するが、具体的な削減率の基準(例:5年で10%削減)は示されておらず、業種・輸送品目・車齢構成によって削減余地が異なるため、勧告・公表の対象になるのは「計画が著しく不十分」「報告を怠った」場合であり、目標未達成そのものが処分対象にはならない。
計画書の様式は国土交通省の公式サイト(物流効率化法のページ)で公開されているが、記入例は大手物流企業を想定したものが多く、中小運送会社向けの簡易版フォーマットは各都道府県トラック協会が独自に作成している場合があるため、埼玉県トラック協会では2026年5月に会員向け説明会を実施予定と告知されている。
よくある誤解――「全員が報告義務」ではない
CLO義務化という呼び方から、「全運送会社が年次報告を国に出さなければならない」と誤解する社長が多いが、制度は努力義務と報告義務を分けて設計しているため、その理解は正確ではない。
- 全員が対象:努力義務(積載効率向上、荷待ち短縮、CO2把握)
- 特定事業者のみ:中長期計画の作成・提出、年次報告、勧告・公表の対象
特定事業者に該当しない中小運送会社は、報告書を国に提出する義務はないが、荷主から「御社のCO2排出量を教えてほしい」と求められる場面は増えており、これは荷主自身が「サプライチェーン全体のCO2排出量(Scope3)」を開示する義務を負っているためだ。
大手荷主の中には、運送委託先に対して「年間のCO2排出量を試算して報告すること」を契約条件に加える動きもあり、この場合は法律上の義務ではなく商取引上の契約条件として求められるため、拒否すれば契約更新が見送られるリスクはある一方で、「当社はCO2データを整備している」と示すことで新規荷主の獲得につながる可能性もある。
燃料価格との関係――2026年6月の現状
2026年6月9日時点、軽油価格は全国平均で158.8円/Lとなり、前週比+0.3円で1週連続の上昇が続いており、この価格水準は、2024年問題(時間外労働の上限規制)が施行された直後の2024年4月頃と比べると約10円高い。
燃料費の高止まりは、運送会社にとってCO2削減と経営効率化の両方を迫る圧力になっており、燃料サーチャージ(燃料価格変動を運賃に反映する仕組み)を導入している運送会社は増えているものの、荷主との交渉が難航し、実際には「運賃据え置き、燃料費は自社負担」のケースも多い。
国土交通省が2024年3月に改定した標準的運賃には、燃料サーチャージの計算式も例示されているが、実際に適用している事例はまだ十分に広がっておらず(全日本トラック協会調査、令和5年度)、CLO義務化を契機に、燃料費の「見える化」を荷主に提示してサーチャージ導入の交渉材料にする動きも出始めている。
計画書作成を支援する外部リソース
特定事業者に該当する場合、自社だけで中長期計画を作成するのは難しく、制度の理解だけでなく、数値の集計方法や記載の整合性も問われるため、以下のリソースを併用することで実務負担を抑えやすくなる。
- 都道府県トラック協会:会員向けに計画書作成の相談窓口を設けている。埼玉県・神奈川県・千葉県などでは、社会保険労務士や行政書士と連携した無料相談会を実施。
- NASVA(独立行政法人 自動車事故対策機構):運行管理者向けの研修プログラムに「物流効率化法と環境対策」の講座を追加。2026年度の開催予定は各支所のサイトで確認できる。
- 国土交通省の地方運輸局:関東運輸局、近畿運輸局などで、事業者向け説明会を随時開催。質疑応答の議事録も公開されている。
計画書のフォーマット自体は国交省サイトからダウンロードできるが、記入欄の「削減目標の根拠」「具体的取り組み」の書き方は業種や車両構成によって変わり、行政書士に依頼すれば過去の認可事例を踏まえた記載例を提示してもらえる一方、費用は地域や事業規模によって変動するため、複数の事務所に見積もりを取ることが前提になる。
次にやるべきこと――特定事業者か否かの判定から始めろ
まず自社が特定事業者に該当するか否かを判定し、前年度の年間貨物輸送量(トンキロ)を算出して3,000万トンキロと比較する必要があり、デジタコの日報データや運行記録から1年分の「積載重量×走行距離」を集計すればよい。
特定事業者に該当しない場合、報告義務はないが、荷主から「CO2データを出してほしい」と言われる可能性は高く、その場合はデジタコの燃料消費量から概算でCO2排出量を試算する方法を、全日本トラック協会の「環境対策ガイドライン」で確認できる。
特定事業者に該当する場合、2026年9月末までに計画書を提出する必要があり、6月時点であれば都道府県トラック協会の相談窓口に連絡して記入例と提出手順を確認するのが最初の一歩となるが、罰則があるわけではない一方で、勧告・公表の対象になれば取引先や金融機関からの信用に影響するため、早めに動く判断が求められる。


