トラックの燃費改善は運転操作・積載管理・整備の三本柱で取り組む。日常点検と運行前点検の徹底が出発点になる。
主要データ
- 運輸業・郵便業の月間平均就業時間:172.0時間(e-Stat、2026年4月時点)
燃費改善を「ドライバー任せ」にしている会社は、いつまでも改善しない
燃料費は運行原価の中で大きな割合を占める費目の一つとされているが、その費用をどれだけ意識して管理しているかは会社によって大きく差が出るうえ、「うちのドライバーはベテランだから大丈夫」と考えていても、デジタコのデータを見ると急加速・急ブレーキの記録が週に何十件も蓄積されていた、というケースは珍しくない。
運転が荒いかどうかは本人が気づいていないことも多く、フィーリングと実際の燃費は別物であるため、経験が長いドライバーであっても数値で確認しなければ実態を見誤ることがある。
燃費改善を「ドライバーの意識の問題」だと片付けると対策が掛け声だけで終わりやすく、現場では改善したつもりでも数字が動かない状態に陥るため、意識論ではなく仕組みと計測の問題として捉え直す必要がある。
教科書には「エコドライブを徹底しましょう」と書いてあるが、実際の現場ではドライバーが何kmで何リットル使ったかを把握していない会社のほうが多く、その理由は燃費を車両ごとに記録・集計する仕組みを整えていないからであり、そこから始めなければどの車両が燃費を悪化させているのかも、どの区間でロスが出ているのかも見えてこない。
燃費悪化の「本当の原因」を把握するための前提条件
燃費改善の手順に入る前に、現場で必ず確認しておくべき前提があり、燃費に影響する要因は単独で現れるとは限らないため、原因を取り違えないよう大きく四つに分類して整理しておくことが重要となる。
- 運転操作の問題:急加速・急ブレーキ・アイドリング過多・速度超過
- 車両整備の問題:タイヤ空気圧の低下・エンジンオイルの劣化・エアフィルターの目詰まり・燃料噴射系の不具合
- 積載管理の問題:過積載・偏荷重・ラッシング不備による走行不安定
- ルート・運行計画の問題:渋滞区間への飛び込み・不要な迂回・東名高速などの幹線に乗るタイミングの遅れ
必要な道具として、最低限以下のものを用意しておく。
- デジタコ(デジタル式運行記録計):速度・急加速・急ブレーキを自動記録する
- 給油記録台帳またはエクセルシート:車両番号・給油日・給油量・走行距離を入力する
- タイヤ空気圧計:日常点検(運行前点検)で使用する
- メーカー指定の保守マニュアル:交換周期の判断基準として参照する
デジタコを未導入の会社では、ドライバーによる手書きの運行記録(運転日報)が唯一のデータ源になるが、急加速や急ブレーキの回数を手書きで正確に記録するのは現実的ではないため、燃費管理を本格的に取り組むならデジタコの導入が出発点になる。補助金・助成金を活用してコストを抑える方法は、補助金検索(/tools/subsidy/)で業種・目的に合った支援制度を比較できる。
Step 1:車両ごとの燃費を「数字で見える化」する
まず実態を把握することが先決であり、給油伝票を車両ごとに集計して走行距離を給油量で割るという基本作業をしていない会社では、どの車両が燃費を落としているのかが分からないまま、全体最適ができない状態が続く。
いすゞフォワードや日野プロフィア、三菱ふそうスーパーグレートといった主要車種はそれぞれ、空車時と実車時、高速走行時と市街地走行時で燃費特性が大きく異なるうえ、同じ車種でも整備状態によって差が出るため、同一車種・同一ルートで比較しなければ数字が正しく解釈できない。
記録のフォーマットは難しく考えなくてよく、エクセルで「日付・車両番号・給油量・走行距離・燃費(計算値)」の五列を作るだけでも出発点としては十分であり、まず継続できる形にすることが優先される。
月に一度、燃費ランキングを出したい。下位の車両と上位の車両が見えれば、次のアクションも決めやすくなる。
Step 2:運行前点検と日常点検で燃費の土台を作る
燃費悪化の原因として整備不良は見落とされやすく、特にタイヤ空気圧の低下は乗り心地の変化が小さいため気づかないまま走り続けるケースが多いが、空気圧が規定値を下回ると転がり抵抗が増し、燃費に直接影響する。
貨物自動車運送事業法に基づく日常点検(運行前点検)は出発前に実施することが義務付けられており、タイヤ空気圧・タイヤの亀裂や損傷・エンジンオイル量・冷却水量・ブレーキの効き具合などの確認がここに含まれる。
実務上のポイントとして、空気圧の点検は「触ってみて柔らかくなければ大丈夫」という感覚的な確認では不十分であり、エアゲージを使って実測することが前提になるうえ、ウイングボディやリーファコンテナを引くトレーラーでは積載重量が変わるたびにタイヤへの荷重も変化するため、積み付け後の確認まで習慣化したい。
エンジンオイルとエアフィルターの状態も燃費に影響し、交換周期はメーカー指定の保守マニュアルに記載された基準に従うべきだが、走行条件が高速主体か市街地主体か、あるいは粉じんの多い現場かによって負荷は変わるため、過酷な場合は早めの確認を整備工場に相談する判断が求められる。
Step 3:デジタコのデータでドライバーごとの運転傾向を把握する
デジタコが記録する急加速・急ブレーキ・アイドリング時間・速度超過の四項目を、月次で車両別・ドライバー別に集計し、この集計結果を点呼時のフィードバック材料として使うことで、感覚論ではなく数値に基づく指導へ切り替えられる。
急加速は燃料消費を一瞬で増やす操作であり、関越自動車道などの高速道路で合流するときに踏み込むクセがあるドライバーは高速走行時の燃費が悪くなる傾向があるが、アイドリングについては荷待ち時間が長い現場ではエンジンを切りたくないという事情もあるため、禁止だけで解決しようとすると現場が混乱する。
なぜアイドリングが増えているのかを見極めるには、荷役作業・積み付け待ち・荷主との打ち合わせといった要因を分けて考える必要があり、同じ数値の増加であっても背景が違えば対処法も変わってくる。
結論からいえば、急加速・急ブレーキの削減は運転技術だけの問題ではなく、「自分の運転が記録されている」という認識を持てるかどうかにも左右されるため、デジタコの数値を点呼時に本人へ見せるだけでも意識は変わりやすい一方で、フィードバックなしでデジタコのデータを溜め続けても燃費改善にはつながりにくい。
KYT(危険予知トレーニング)や社内ミーティングでヒヤリハットの事例を共有する際に、デジタコのデータを一緒に見せると安全と燃費の両方を同じ場で話せるため、安全教育の文脈で燃費データを活用するほうがドライバーの受け入れ度も上がりやすい。

Step 4:積載効率と運行ルートで「走らない無駄」を削る
燃費を考えるときは、「いかに効率よく走るか」だけでなく「無駄な走行自体を減らす」視点が欠かせず、車両総重量・軸重が規定内であっても、空荷の往復便が多ければ燃料を無駄に使っていることになる。
全日本トラック協会が示す積載効率の目標は輸送の効率化を考える上での基準の一つとされており、2025年4月に施行された改正物流効率化法の第一段階では積載効率の向上が荷主・物流事業者双方の努力義務として位置づけられたため、空荷の回送を減らすための帰り便の確保や積み合わせによる積載効率の引き上げが制度面からも求められる流れになっている。
ルート面では、渋滞の多い時間帯に市街地を走るルートと、多少距離が長くても高速道路を使うルートを比較した場合、燃費面での有利不利は「距離×速度×アイドリング時間」の組み合わせで変わる。
東名高速や湾岸線を使う定期便では、ETCの各種割引制度(深夜・休日・平日朝夕等)を組み合わせて運行計画に反映することで、高速料金の負担を抑えつつ走行時間の短縮と燃費の改善を両立できる場合があるが、高速料金の具体額は車種・距離・時間帯で変動するため、NEXCO各社の料金検索で個別ルートごとに試算することが前提だ。
連続運転時間の管理も運行計画に影響し、改善基準告示が定める連続運転時間の上限に近づく前に適切な休憩をサービスエリアや道の駅で取ることは、ドライバーの疲労軽減だけでなく過度な速度超過を防ぐ観点からも燃費管理と連動している。拘束時間・休息期間の基準確認には、改善基準告示チェッカー(/tools/driving-hours-check/)で勤務時間から基準を確認できる。
Step 5:燃料サーチャージの計算と荷主への反映を仕組み化する
燃費を改善しても、軽油価格が上昇すれば燃料費の総額は増えるため、自社でコントロールできるのは「何リットル使うか」であって「1リットルいくらか」ではないという前提を踏まえ、燃料コストの変動分を運賃に転嫁する燃料サーチャージの仕組みを整える必要がある。
軽油価格は週次で変動するため、特定時点の価格を運賃計算の基準に固定したまま放置すると価格が上昇した局面で利益が急激に圧縮される。資源エネルギー庁が毎週公表している「石油製品価格調査」(都道府県別・販売業態別)を確認し、自社のサーチャージ基準価格との乖離を定期的にチェックする体制を作っておく。自社の燃料費・サーチャージの試算は、燃料サーチャージ計算ツール(/tools/fuel-surcharge/)を使うと軽油価格から月間サーチャージ額を算出できる。
2024年3月に告示された新たな標準的運賃では、燃料費などのコスト変動を適切に反映した運賃水準が示されており、荷主との運賃交渉でこの標準的運賃を参照しながら燃料コストの転嫁を求めることは制度が後押しする方向といえるが、具体的な交渉の進め方や運賃水準の断定には慎重を期し、最終的な判断は行政書士や業界団体への相談を前提にしたい。
よくある失敗と対処法
「一括で全車両に指示を出したが変化がなかった」
ある30台規模の運送会社で、社内朝礼でエコドライブを全員に呼びかけたが翌月のデジタコ集計を見ると急加速の件数がほとんど変わっていなかった、というケースがある。原因は、全員への一括指示だったため「自分への話だ」と受け取ったドライバーが少なかったことにあり、対処としては車両別・ドライバー別に数値を出し、個別にフィードバックする仕組みに切り替えることが求められる。
数字が見えるようになると、ドライバー自身が「先月より下がった」「あの区間で使い過ぎている」と気づき始め、指示だけでは起きにくかった変化が現場に出やすくなる。
「タイヤを交換したのに燃費が改善しなかった」
タイヤを新品に交換したタイミングで空気圧の設定を忘れ、規定値より低い状態のまま走り続けていたために転がり抵抗が増していた、という実態はよくある。
交換直後こそ空気圧の確認が必要であり、整備工場任せにせず、自社の日常点検チェックシートに「タイヤ交換後の翌日点検」の項目を追加して確認漏れを防ぐ運用へつなげたい。
「デジタコを導入したが活用できていない」
デジタコのデータはあるが、誰も見ていない状態の会社は少なくなく、データを使うためのルール――誰がいつ集計し、どの数値を点呼時にフィードバックするか――を決めていなければ、機器は記録するだけで終わる。
まず月次で一枚の集計シートを作り、燃費ワーストの車両と急加速ワーストのドライバーを毎月確認するところから始めれば、活用の流れを現場に定着させやすい。
安全上の注意点
燃費改善の取り組みが安全に反する運転を誘発しないよう注意が必要であり、数値だけを追わせる運用にすると現場が誤った受け止め方をするおそれもあるため、指導の前提を明確にしておきたい。
「燃費を下げろ」という指示だけを強調すると、ドライバーが無理なエンジンブレーキや不適切なギア操作を行い、車両に負荷をかける場合がある。特に初任運転者や経験の浅いドライバーへの教育では、燃費と安全の両立が本来の目標であることを明確にする必要があり、過積載は燃費を悪化させるだけでなく制動距離が伸びて重大事故につながるため、軸重・車両総重量の管理は安全管理と燃費管理が一致する領域となっている。
適性診断やSAS(睡眠時無呼吸症候群)検査を経て健康状態を管理することも、疲労による乱暴な運転操作を防ぐ意味で燃費と間接的につながっており、NASVAの適性診断を定期的に受けさせることは事故防止と経営の両面で意味がある。
また、2024年4月から自動車運転業務に適用された労働基準法に基づく時間外労働の上限規制(年960時間以内)と、改正改善基準告示の下では、拘束時間を削減しながら走行距離を確保するためにドライバーが無理な運転をするリスクがあるため、休息期間の確保と燃費管理は労務管理と一体で設計することが前提になり、最終判断は社労士に確認することを勧める。
次にやるべきこと——この状態になったら動け
燃費改善の取り組みには優先順位があり、限られた人員と時間の中で効果を出すには、原因の切り分けに必要なデータを先にそろえ、その後に点検・指導・交渉へ進む流れで着手するのが現実的だ。
- 今月中に着手:給油伝票を車両別に集計し、燃費ワースト車両を特定する。デジタコが入っているなら急加速・急ブレーキのランキングを出す。
- 翌月の点呼から:燃費の悪いドライバーに個別フィードバックを始める。「先月の急加速の件数はこれだけあった」という事実を数字で見せる。
- 3か月以内に:日常点検チェックシートにタイヤ空気圧の実測記録欄を設け、毎日記入・確認する仕組みを作る。帳票テンプレートが必要な場合は、帳票テンプレート集(/tools/forms/)から点呼記録簿や運転日報の様式を無料でダウンロードできる。
- 半年以内に:燃料サーチャージの算定ルールを荷主と合意する。資源エネルギー庁の「石油製品価格調査」の更新タイミングに合わせて定期的に見直す仕組みを整える。
燃費が月単位で悪化し続けているなら、それは整備か運転か積載か運行計画のどこかに問題があるサインであり、「なんとなく悪い気がする」という感覚の段階で動くより、数字が出た時点で原因別に分解して対処するほうが改善につなげやすい。



