北海道の軽油価格は全国平均を下回る傾向が続くが、配送エリアの広さと冬季の燃費悪化を前提に、年間燃料コストは道外より高くつく現実がある。
主要データ
- 北海道軽油価格(2026年6月):155.2円/L(資源エネルギー庁 石油製品価格調査)
- 全国平均軽油価格(2026年6月):158.8円/L(前週比+0.3円)
- トラック輸送量指数(2025年12月):204,468(国土交通省 自動車輸送統計調査)
- 北海道の事業用貨物車保有台数:約6.8万台(国土交通省 自動車保有台数統計 令和5年度)
北海道の軽油価格は全国平均より3.6円安い――それでも燃料コストが膨らむ理由
2026年6月21日時点、北海道の軽油価格は155.2円/Lで全国平均158.8円/Lを3.6円下回っており、資源エネルギー庁の石油製品価格調査(週次)でもこの価格差は過去1年間ほぼ一貫して続いているため、給油単価だけを見れば道内の運送会社は有利な立場にあるように映る。
しかし、現場の感覚はそれほど単純ではなく、札幌―釧路間は片道約340km、函館―稚内は約500kmに及ぶうえ、道内配送であっても本州の県境をまたぐ長距離輸送に近い走行が日常化しており、さらに11月から翌3月まで続く冬季は暖機運転・路面抵抗・スタッドレスタイヤの転がり抵抗増によって燃費が夏季比15〜20%悪化するという報告が、全日本トラック協会北海道支部のヒアリング調査(令和4年度)に記録されている。
つまり、リッター単価が安くても年間総消費量が増えれば燃料コストは膨らみやすく、北海道では価格そのものよりも消費量を含めた総額管理の比重が高い。国土交通省「自動車輸送統計年報(令和4年度)」によると、北海道の営業用貨物自動車の年間平均走行距離は約58,000km/台で、全国平均の約48,000km/台を約2割上回っており、単価の安さだけでは吸収しきれない構造が統計にも表れている。
道内給油所は減少を続け、セルフ化が加速している

経済産業省の特定サービス産業動態統計調査(令和5年度)によると、北海道内の給油所数は約1,200ヶ所で、5年前から約150ヶ所減少した。とくに道北・道東の過疎地では閉鎖が相次ぎ、稚内市や根室市の一部地域では次の給油所まで50km以上というケースも報告されているうえ、全国の給油所数も令和5年度時点で約27,000ヶ所とピーク時(平成6年度・約60,000ヶ所)の半数以下まで減少しているため、北海道だけの一時的な事情というより、全国的な縮小の流れの中で道内の不便さが先鋭化していると捉えた方が実態に近い。
残存する給油所のうち、セルフ式の比率は約4割に達する。北海道は本州に比べて土地代が安いため大型セルフステーションの出店が進みやすい一方で、札幌市・旭川市・帯広市など人口集積地では価格競争が激しく、フルサービス給油所は人件費負担のみならず冬季の除雪コストも重なるため閉鎖が続いており、運送会社にとっては配送ルート上の給油拠点をどう確保するかが運行計画の前提になっている。
冬季の給油計画は「残量30%で次の給油所」が鉄則
北海道の冬季運行では、吹雪による通行止めと立ち往生リスクを考慮し、燃料残量に余裕を持たせる運行管理が求められます。具体的な給油タイミングは、配送ルート・気象条件・給油所間の距離により異なるため、運行管理者や経験豊富なドライバーとの協議のもと自社基準を設定してください。
その理由は、吹雪による通行止めと立ち往生リスクが現実的であり、国道の一部区間が数時間閉鎖されることも珍しくないため、燃料残量に余裕がないまま走行すると車内暖房を止めざるを得ない事態に陥る可能性が高まるからだ。
このため、道内の運行管理者は配車時に給油所の位置と営業時間を必ず確認し、ドライバーには「次の給油所が遠い場合は手前で満タンにする」といった指示を徹底している。夜間・早朝は閉鎖されるフルサービス給油所も多く、24時間営業のセルフステーションの場所を事前に把握しておく作業が、机上の準備に見えて実務ではかなり重みを持つ。
価格推移と変動要因――原油高と為替の影響を受けやすい構造
資源エネルギー庁の週次調査データを過去1年分追うと、北海道の軽油価格は2025年6月の149円/L台から2026年6月の155円/L台まで約6円上昇しており、この間の変動は原油価格(ドバイ原油)の推移と為替レート(円/ドル)にほぼ連動しているため、道内の需要だけで価格が決まるわけではなく、国際市場の影響を直接受ける構造が確認できる。
全日本トラック協会の「日本のトラック輸送産業―現状と課題―」(令和5年度版)によると、運送事業者の営業費用に占める燃料費比率は約14.3%であり、価格が1円変動するだけでも年間コストは保有台数×走行距離に応じて数十万〜数百万円単位で動く。特に北海道は1台あたりの年間走行距離が長い一方で、全日本トラック協会「経営分析報告書(令和4年度)」でもトラック運送業の営業利益率の中央値は1.5%にとどまるとされているため、燃料費の上昇が利益を押しつぶしやすい経営構造が浮かび上がる。
燃料サーチャージ制度の導入が遅れている現実
国土交通省は2020年に「標準的な運賃」制度を告示し、燃料費の高騰分を運賃に転嫁する燃料サーチャージの採用を推奨している。ところが、北海道トラック協会の会員アンケート(令和4年度)では、サーチャージ条項を運送契約に盛り込んでいる事業者は全体の3割未満にとどまる。
背景には、荷主との力関係と競合他社との価格競争があり、とくに食品・日用品の道内配送では元請け運送会社が価格を据え置いたまま下請けに転嫁するケースが多いため、燃料高騰分を吸収できず赤字運行を続ける中小事業者が少なくない。制度が存在していても契約実務に反映されるまでには時間差があり、そのずれが北海道の運送業界でいまも重く残っている。
地域別・給油形態別の価格差をどう活用するか
資源エネルギー庁の調査では、同じ北海道内でも札幌市と道東・道北の過疎地では価格差が生じるケースがあり、セルフ式とフルサービスでも同一エリア内で数円の差が出るため、運送会社がこの価格差を活用するには、以下の3つの視点を切り分けて考える必要がある。
配送ルート上の給油拠点を事前にリスト化する
配車システムや紙の運行表に、主要ルート上の給油所(名称・住所・営業時間・セルフ/フルサービス区分)を登録しておく。ドライバーが現場で迷わず、最も安い給油所に寄れるようにするためだ。
ただし、北海道では給油所間の距離が長いため、「安いから次に行く」という判断がかえって燃料の無駄遣いになる場合もあり、走行距離と価格差を天秤にかけながらトータルコストで判断する習慣を社内に定着させなければ、単価差を追ったつもりが逆に総額を押し上げることにもなりかねない。
法人契約・カード決済で単価を下げる交渉を行う
法人契約による軽油価格の値引き幅は、給油所チェーン・月間給油量・契約条件により異なります。自社の消費実績をもとに複数の給油所系列から見積もりを取得し、条件を比較したうえで判断してください。特に道内に複数拠点を持つセルフ系列(エネオス・出光・コスモ等)では、月間給油量に応じた値引き条件を提示してくる。
交渉の際は、自社の月間軽油消費量(リットル)と給油頻度を正確に集計し、複数の給油所系列から見積もりを取得して条件を比較することが重要です。契約期間の縛りや解約条件もあるため、契約書の内容は顧問税理士や行政書士に確認してから締結する必要があり、単価だけで飛びつくよりも、継続利用したときの総条件で見た方が後悔は少ない。
冬季と夏季で給油計画を分ける
冬季は燃費が悪化するため、同じ配送ルートでも給油回数が増える傾向があります。季節ごとの燃費変化は車両・タイヤ・運転条件により異なるため、自社の運行実績をもとに冬季用の給油計画を見直してください。したがって、10月末までに冬季用の給油計画を見直し、ドライバーに共有しておくことが実務上の標準手順となる。
また、冬季は給油所周辺の除雪状況や駐車スペースの確保も問題になり、大型トラックが入れる給油レーンが雪で埋まっているケースもあるため、事前に現地の状況を確認するか、ドライバーから「この給油所は冬季使いにくい」という報告を集約しておくことで、机上の計画と現場運用のずれを小さくしやすい。
価格情報の収集と更新――どこまで手間をかけるか
軽油価格は週次で変動するため、毎週最新情報を追いかけるのは中小運送会社にとって負担が大きい。一方で、何も見ないままでは給油計画の修正が遅れるため、現実的には以下の3段階で情報収集の深さを調整するのが運用しやすい。
段階1:資源エネルギー庁の週次調査を月1回確認する
資源エネルギー庁は毎週月曜日に「石油製品価格調査」の結果を公表しており、都道府県別の平均価格が掲載されている。この数値を月に1回、月初にチェックするだけでも価格トレンドは把握でき、急激な高騰・下落があった場合は、その月の給油計画を見直す判断材料になる。
段階2:主要取引先の給油所に電話で確認する
法人契約を結んでいる給油所や、配送ルート上で頻繁に利用する給油所には、月1回電話で「今月の軽油単価はいくらか」を確認する。店頭価格と法人価格が異なる場合もあるため、実際に支払う金額を把握しておくことが重要となっている。
段階3:ドライバーから給油実績を報告させる
給油伝票または燃料カードの明細をもとに、「いつ・どこで・いくらで給油したか」をExcelや紙の台帳に記録する。これを1ヶ月分集計すると、どの給油所が安く、どの時期に高騰したかが見えてくるため、デジタコや運行管理システムを導入していない会社でも、この程度の集計であれば手作業で十分に対応可能である。
燃費改善と価格交渉、どちらを優先すべきか
結論からいえば、優先すべきは燃費改善である。軽油価格が1円下がっても、燃費が1km/L悪化すれば効果は相殺されるため、北海道のように冬季の燃費悪化が出やすい地域では、まず運転操作・車両整備・積載方法の見直しで数%の改善を積み上げる方が実務に結びつきやすい。
全日本トラック協会の「エコドライブ推進マニュアル」(令和3年度版)によると、急加速・急減速を抑えるだけで燃費が5〜10%改善する事例が報告されている。また、タイヤ空気圧の定期点検やエンジンオイルの適切な交換周期の順守も燃費に直結し、これらは追加コストがほとんどかからないにもかかわらず、ドライバー教育と日常点検の徹底だけで実行しやすい施策に含まれる。
価格交渉は、燃費改善の取り組みが一巡してから着手する考え方が整理しやすい。法人契約の交渉材料として「当社は月間○○リットル給油している」という実績を示す際、燃費改善で消費量が減ると交渉力が落ちるという見方もあるが、一方で燃費改善で浮いた分を価格交渉でさらに削減できれば二重にコストを圧縮できるため、順序立てて進める意味は小さくない。
よくある失敗――価格だけ見て給油所を選び、配送遅延を招いた事例
ある10台規模の運送会社は、札幌市内の最安値セルフ給油所を全車両の指定給油拠点にした。だが、その給油所は幹線道路から外れた住宅地にあり、大型トラックが入るには狭い市道を通る必要があったうえ、冬季に入ると除雪が遅れて給油所へのアクセス路が渋滞し、給油待ちの時間が夏季の倍以上かかるようになった。
その結果、配送スケジュールに30分〜1時間の遅れが常態化し、荷主からクレームを受けた。単価が2円安くても、1回の給油で100リッター入れたとして節約額は200円にとどまる一方で、配送遅延で失った信用と次回契約での運賃据え置き圧力は数万円規模の損失につながったため、価格は判断材料の一つにすぎず、アクセス性・営業時間・給油レーン数・冬季の除雪状況まで含めて総合判断する必要がある。
規模・予算別の判断基準――保有台数で変わる価格管理の深さ
保有台数が10台未満の小規模事業者と、30台以上の中堅事業者では、軽油価格への対応方法が異なる。以下に、規模別の現実的な判断基準を示す。
保有10台未満:給油所は固定し、法人契約で単価を下げる
台数が少ない場合、複数の給油所を使い分けると管理コストが増える。配送エリア内で24時間営業のセルフ給油所を1〜2ヶ所に絞り、法人カード契約による値引き条件を給油所系列に確認してください。月間消費量が少なくても、継続利用を条件に値引きに応じてくれる系列は多い。
燃料費の管理は、法人カードの月次明細をExcelに転記する程度で十分であり、価格変動の追跡に手間をかけるよりも、燃費の悪化や異常消費がないかを継続的にチェックする方が優先度は高い。
保有10〜30台:配送ルートごとに給油拠点を複数確保する
台数が増えると、配送エリアも広がる。札幌を拠点に道東・道北・道南へ配送する場合、各方面に1〜2ヶ所ずつ給油拠点を確保し、ドライバーに「このルートならA給油所、あのルートならB給油所」と指示する。
この規模になると、デジタコや運行管理システムの導入を検討する段階に入り、給油実績を自動集計できれば、どの給油所が安いか、どのドライバーの燃費が悪いかが一目で分かる。一方で、システム導入にはIT導入補助金などの支援制度もあるため、中小企業庁や商工会議所に相談してから判断する流れが、費用対効果を見極めるうえでは無理が少ない。
保有30台以上:燃料サーチャージ条項を契約に盛り込む交渉を始める
保有台数が一定規模を超えた場合、燃料費の変動が経営に与える影響は大きくなります。荷主との運送契約に燃料サーチャージ条項を盛り込む交渉、または運賃改定・庸車比率の見直しなど、自社の経営状況に応じた対応を検討してください。都道府県トラック協会や運送業に詳しい士業への相談も有効です。
交渉が難航する場合は、都道府県トラック協会の経営相談窓口や、運送業に詳しい行政書士・社労士に同席を依頼する方法もある。契約書の文言や計算式の設計は専門知識が必要であり、自社だけで進めると論点整理に時間を取られやすいため、士業の助言を受けながら進行管理した方が実務上の負担を抑えやすい。
今後の見通しと、運送会社が取るべき現実的な対応
軽油価格は国際原油市場と為替レートに左右されるため、中小運送会社が価格そのものをコントロールすることはできない。だが、価格変動の影響を小さくするための手段は複数ある。
第一に燃費改善と給油拠点の最適化でコストを削減し、第二に法人契約や燃料カードで単価を下げる交渉を行い、第三に燃料サーチャージ条項を契約に盛り込んで高騰分を荷主と分担する仕組みを作るという3つを並行して進めれば、単価変動に振り回されにくい運用体制を整えやすくなる。
ベテラン運行管理者がよく口にするのは、「価格を追いかけるより、無駄な燃料を使わない運行計画を組む方が効く」という感覚だ。軽油価格の動向を把握しつつ、自社でコントロールできる部分に地道に手を入れていく姿勢こそが、北海道の運送会社が継続的に収益を守るうえで土台になっていく。
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