デジタコは運行記録計のデジタル版で、速度・時間・距離を自動記録し、拘束時間管理と事故防止に使う。義務化対象の確認と記録の読み方が導入時の最初の壁になる。

主要データ

  • 運輸業の有効求人倍率:2.72倍(2026年3月、厚生労働省 一般職業紹介状況)
  • 全国平均軽油価格:158.8円/L(2026年6月10日時点、前週比+0.3円、1週連続上昇)
  • デジタコ装着義務車両:車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の事業用貨物自動車(国土交通省 貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条、平成29年改正)

デジタコ導入で最初に詰まるのは「記録の読み方」だ

デジタコを導入した運送会社が最初に直面する壁は、機器の取り付けでも操作方法でもなく、記録されたデータを「どう読むか」であり、速度グラフの波形や拘束時間の累積計算、休憩の取得タイミングを運行管理者が正確に判断できなければ、機器を付けても改善基準告示の管理にはつながらない。

現場でよくあるのは、アナログ式の運行記録計(通称タコグラフ)からデジタコに切り替えた直後、ドライバーから上がってくる記録量が一気に増えて運行管理者が処理しきれなくなるケースであり、アナログ盤面なら1日1枚を目視でざっくり確認していた会社でも、デジタコでは速度超過の回数、アイドリング時間、急加速・急ブレーキの回数まで数値化されて1台1日あたり数十件のアラートが出るため、この段階で見るべきポイントを絞り込めないと、重要な拘束時間違反を見逃して巡回指導で一発アウトになりかねない。

結論からいえば、デジタコ導入の成否は「何を記録するか」ではなく、「何を確認しなければならないか」を現場が理解しているかで決まり、機器の性能だけでは足りず、運行管理者とドライバーの「読み方」が先に揃っているかどうかが問われる。国土交通省「自動車運送事業者に対する監査の実施状況」(令和4年度)によれば、運行記録計の記録不備や改ざんに起因する行政処分は年間約300件に上り、このうち約6割が「記録を確認していたが違反を見逃した」ケースだった。

デジタコとは何か――アナログタコグラフとの違い

デジタコとは、デジタル式運行記録計の略称であり、車両の速度・走行距離・運転時間をセンサーとGPSで自動記録して電子データとして保存する装置である。アナログ式運行記録計(タコグラフ)が円盤状のチャート紙に針でグラフを描くのに対し、デジタコはすべてデータで記録し、USBメモリやSDカード、通信回線を通じて管理者に送信する仕組みとなっている。

国土交通省が定める「貨物自動車運送事業輸送安全規則」第9条では、車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の事業用貨物自動車に対し、運行記録計の装着を義務付けており、平成29年の改正以降、この「運行記録計」にはデジタコも含まれると明示されたため、現在は新車導入時にデジタコを選ぶ事業者が大半を占める。全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題2024」によると、保有車両台数10台以上の事業者におけるデジタコ導入率は約82%に達しており、義務化対象車両以外への任意装着も進んでいることが見て取れる。

アナログとデジタルの機能比較

アナログ式運行記録計は、チャート紙に速度・距離・時刻を記録するため、視覚的に「走行の波形」を把握しやすく、運行管理者が慣れていれば盤面を一目見て「ここで速度超過」「ここで休憩不足」と判断しやすい。一方で、記録の保存は紙媒体であるため1年分の保管スペースが必要になり、さらに拘束時間の計算は手作業となることから、月次集計に丸一日かかる会社も珍しくない。

デジタコは、速度・時間・距離のみならず、アイドリング時間、急加速・急ブレーキの回数、エンジン回転数までリアルタイムで記録し、データをクラウドやPCで一元管理できる一方で、拘束時間の自動集計機能を持つ機種なら改善基準告示の超過アラートを即座に出せるものの、データ量が多いため「何をどこまで見るか」の判断基準を現場で共有しないと、情報過多でかえって管理が煩雑になりやすい。

デジタコ導入の義務化対象を確認する

デジタコの装着義務があるのは、事業用の緑ナンバー車両のうち、車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の貨物自動車であり、いすゞフォワードや三菱ふそうファイターといった4トン車クラスは最大積載量が4トン前後のため対象になる。一方、2トン車や軽貨物(白ナンバー含む)は義務対象外だが、任意で装着する事業者も増えている。

義務化の根拠は「貨物自動車運送事業輸送安全規則」第9条だが、具体的な装着時期や記録の保存期間、違反時の行政処分基準は「自動車運送事業者に対する行政処分等の基準」(国土交通省告示)で定められており、記録の保存は1年間である。違反が確認された場合は輸送施設の使用停止や事業許可取消しの対象にもなり得るため、車両区分の境目や運用上の解釈で迷う場合には、社内判断だけで進めず、運輸支局または行政書士への確認を前提にしたい。

デジタコ導入の手順――全体像を把握する

デジタコ導入は、機器選定・取り付け・運用開始の3ステップに分かれるが、現場で失敗しやすいのは「運用開始後にルールを作る」パターンであり、機器が納品されてから「誰がどのタイミングで記録を確認するか」を決めると、ドライバーと運行管理者の間で認識のズレが生じ、記録漏れや違反の見逃しが続きやすい。

ステップ1:機器の選定と補助金の確認

デジタコは、本体価格が1台あたり10万円前後から、通信機能やクラウド連携を含めると30万円を超える機種まで幅広い。選定時に見るべきポイントは3つある。拘束時間の自動集計機能の有無、データ送信方式(USB/SD/通信)、既存の車両管理システムとの連携可否だ。

補助金は、国土交通省「安全装置等導入促進事業」や経済産業庁「IT導入補助金」で対象になる場合があるが、公募年度や交付条件が変わるため、具体的な金額や採択条件は所管省庁の最新公募要領で確認する必要があり、申請代行を依頼する場合は、行政書士または中小企業診断士に相談すると手続きが進めやすい。導入費だけを見て機種を選ぶと、通信費やソフト利用料が後から効いてくるため、初年度総額で比較しておくほうが現場では判断しやすい。

ステップ2:取り付けと初期設定

デジタコの取り付けは、車両の速度センサーやOBD-IIポートに接続して行う。作業自体は整備工場で1台あたり2〜3時間程度だが、初期設定でドライバーの登録、車両番号の紐付け、拘束時間のアラート設定を済ませておかないと、運用開始後にデータが正しく集計されない。

初期設定で見落としやすいのが、ドライバーごとの「始業・終業時刻」の入力方式であり、機種によってはドライバーが乗車時にICカードをタッチして始業を記録する方式と、運行管理者が事後に入力する方式がある。前者は記録漏れが少ない一方でカードの紛失リスクがあり、後者は管理者の手間が増えるがドライバーの操作ミスを防げるため、どちらが自社の運用体制に合うかを、導入前の段階で詰めておく必要がある。

ステップ3:運用ルールの策定と周知

デジタコ導入後に最も重要なのは、「誰が」「いつ」「何を確認するか」を明文化し、ドライバーと運行管理者に周知することである。現場でよくあるのは、デジタコのデータをドライバーがUSBで持ち帰るまで放置し、運行管理者が週に一度まとめて確認するパターンだ。これでは拘束時間違反が発生してから数日後に気づくことになり、改善基準告示の遵守という本来の目的を果たしにくい。

実務上、デジタコの記録は「翌日朝までに運行管理者が確認」を基本とする。これは、改善基準告示で定められた拘束時間が「1日(始業から24時間)」を単位とするためであり、違反が確認された場合は翌日の運行計画を調整して連続運転を避ける、休息期間を確保するといった対応が必要になるため、判断を遅らせるほどドライバーの疲労が蓄積し、事故リスクも高まっていく。

デジタコで記録される項目と確認の優先順位

デジタコが記録する項目は機種によって異なるが、最低限確認すべきは速度・走行時間・休憩時間・拘束時間の4つであり、これ以外にアイドリング時間、急加速・急ブレーキ、エンジン回転数なども記録される。一方で、運行管理者が毎日すべてを確認するのは現実的ではないため、優先順位を決めて重要度の高い項目から順に見る運用が必要になる。

1. 拘束時間と休息期間――最優先で確認する

拘束時間は、始業から終業までの時間で、休憩時間を含む。厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)では、1日の拘束時間を原則13時間以内、最大16時間まで延長可能(ただし15時間超は週2回以内)と定めている。デジタコの自動集計機能を使えば、この上限を超えた日を即座に抽出できる。

教科書では「拘束時間13時間」と書かれているが、実際の長距離輸送では中継輸送を組まない限り、関東と九州を1運行で結ぶ場合は16時間近くかかることも珍しくなく、この場合は週の運行計画全体で15時間超の日が週2回以内に収まるよう調整する必要がある。デジタコの記録を見て「今週すでに2回15時間超」なら翌週は13時間以内に抑える運行しか組めず、この判断を運行管理者がリアルタイムで行えるかどうかが、2024年問題への対応を左右する。厚生労働省「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査」(令和3年度)では、長距離輸送に従事するトラックドライバーの1日平均拘束時間は14.3時間、休息期間は平均8.9時間であり、改善基準告示の努力義務(休息期間継続11時間以上)を満たせていない実態が明らかになっている。

2. 連続運転時間――4時間を超えたら即違反

連続運転時間は、改善基準告示で「4時間以内」と明確に定められており、4時間を超える前に最低30分以上の休憩(分割可、10分以上×3回でもよい)を取らなければならない。デジタコは、連続運転が4時間に達する前にアラートを出す機種が多いが、ドライバーがこれを無視して走り続けると、記録上は「4時間10分連続運転」といった違反データが残る。

東名高速や関越自動車道といった長距離路線では、サービスエリアの混雑でトラックの駐車スペースが確保できず、「次のSAまで走る」と判断してしまうドライバーもいるため、4時間を数分超過するケースが頻発する。運行管理者は、デジタコの記録を翌日確認し、連続運転違反があれば即座にドライバーと対話したうえで、「次回からは3時間50分で必ず休憩を入れる」といった具体的な指示まで落とし込む必要がある。

3. 速度超過と急加速・急ブレーキ――安全運転の指標

デジタコは、車両の速度を秒単位で記録するため、一般道での制限速度超過や高速道路での速度違反を正確に把握できる。ただし、速度超過の記録がすべて「違反」とは限らず、坂道での一時的な加速や追い越し時の速度上昇など、交通の流れに合わせた運転で記録される場合もある。

運行管理者が確認すべきは、「常習的な速度超過」と「急加速・急ブレーキの頻度」であり、同じドライバーが毎日10回以上の急ブレーキを記録している場合は、車間距離の取り方や予測運転に問題がある可能性が高い。逆に、速度超過が月に1〜2回程度なら個別指導で対応できる範囲にとどまるため、デジタコのアラートが出るたびに全件を追いかけるのではなく、「月次で集計し、上位3名を重点指導」といった運用のほうが現実的である。

デジタコ導入で必要な道具と前提条件

デジタコを運用するには、機器本体のほかに、データを読み取るPC、記録を保存するクラウドまたはサーバー、ドライバーへの指導用資料が必要になる。さらに、運行管理者がデータを読み解くための最低限の知識、すなわち改善基準告示の内容、拘束時間の計算方法、休息期間の定義を持っていることが前提となる。

必要な機器とソフトウェア

デジタコ本体は、車載器とディスプレイ、GPSアンテナで構成される。データの送信方式は、USB/SDカードで物理的に回収する方式と、通信回線(LTE/3G)でリアルタイム送信する方式がある。前者はコストが低いが、ドライバーが帰社しないとデータが確認できない。後者は月額通信費がかかるが、運行中のリアルタイム監視が可能だ。

データを読み取るPCには、デジタコメーカーが提供する専用ソフトをインストールし、このソフトで速度グラフ、拘束時間の集計、ドライバー別の運転評価(エコドライブスコア等)を表示できる。ソフトのライセンス費用は、買い切りで数万円から、月額サブスクリプションで数千円のものまであり、導入規模と利用頻度に応じて選定することになるが、現場では「見たい帳票がすぐ出せるか」が継続利用を左右しやすい。

運行管理者に求められる知識

デジタコの記録を正しく読むには、改善基準告示の内容を理解している必要がある。特に、拘束時間・休息期間・連続運転時間の定義は実務で必ず使う。拘束時間は「始業から終業までの時間(休憩含む)」、休息期間は「勤務と次の勤務の間の自由時間で、原則8時間以上(継続11時間が努力義務)」、連続運転時間は「運転開始から4時間以内に30分以上の休憩」だ。

教科書では「拘束時間1日13時間、休息期間8時間」と書かれているが、実際の現場では「13時間+8時間=21時間」で1日が回るとは限らず、24時間-13時間=11時間が理論上の休息期間になる一方で、荷主指定の納品時刻、帰り便の予約時刻、高速道路の混雑状況が重なると、実質的に8時間の休息すら確保できないケースも出てくる。この「理論と現実のズレ」をどう埋めるかが、運行管理者の判断力として問われる部分である。

ドライバーへの周知と教育

デジタコ導入時、ドライバーに対して「何が記録されるか」「どう評価されるか」を明確に伝えないと、機器を「監視装置」と受け取られ、現場の反発を招きやすい。実務上は、導入前に全ドライバーを集めて説明会を開き、デジタコの目的が「労働時間の適正管理と事故防止」であることを共有するのが基本である。

説明会では、改善基準告示の内容を噛み砕いて伝え、「拘束時間16時間を超えると会社が行政処分を受ける」「連続運転4時間超は即違反」といった具体的なリスクを示す。さらに、デジタコの記録が給与計算や評価に直結する場合はその基準も明示し、「エコドライブスコアが月平均80点以上で燃料手当支給」といった形でドライバーにとってのメリットを可視化すると、協力を得やすくなる。

現場で応用するコツ――デジタコを「使える道具」にする

デジタコは「付けて終わり」ではなく、記録をどう活用するかで効果が決まる。現場でよくあるのは、デジタコのデータを月次でまとめて集計し、紙に印刷して保存するだけの運用である。これではリアルタイムで拘束時間違反に気づけず、改善基準告示の遵守という本来の目的が果たせない。

拘束時間の予測管理――翌週の計画に反映する

デジタコの記録を「事後確認」だけでなく「予測管理」に使う運行管理者は、拘束時間違反を未然に防ぎやすい。具体的には、今週の拘束時間実績を金曜日に集計し、15時間超の日が週2回に達しているドライバーを抽出する。該当者には、翌週の運行計画で「13時間以内に収まる近距離便」を優先的に割り振る。

この運用は、ドライバーごとの拘束時間実績を週次で可視化するExcelシートがあれば、デジタコの専用ソフトがなくても実行できる。重要なのは、「今週の実績が翌週の計画に反映される」サイクルを回すことであり、数字を眺めるだけで終わらせない点にある。配車担当と運行管理者が別れている会社では、ここが切れると記録と計画がつながらないため、週末の共有タイミングを固定しておくと運用がぶれにくい。

ドライバーとの対話に記録を使う

デジタコの記録を一方的に「評価」に使うと、ドライバーは萎縮し、記録の改ざんや虚偽報告を試みるリスクがある。実際、GPSの電源を切る、ICカードを他人に貸すといった不正行為は現場で散見されるため、これを防ぐには、デジタコの記録を「対話の材料」として使う姿勢が欠かせない。

例えば、連続運転4時間超の記録が出たドライバーに対し、「なぜこのタイミングで休憩を取れなかったのか」を聞き取る。理由が「SAが満車だった」なら、次回からは「3時間50分時点で次のSAを確認し、満車なら手前で停車」といった具体的な指示を出す。理由が「納品時刻に間に合わせるため」なら、荷主との納品時刻交渉や運行計画の見直しが必要であり、記録をきっかけに「何が問題か」を現場と共有することで改善が進みやすくなる。

デジタコと運行管理システムの連携

デジタコ単体では、拘束時間の集計はできても、配車計画や荷主との納品調整まではカバーできない。中小運送会社が「次の一手」として考えるのは、デジタコと運行管理システム(配車システム)の連携である。デジタコの拘束時間実績を運行管理システムに取り込めば、「明日の配車計画で拘束時間16時間超が予測されるドライバー」を自動抽出できる。

ただし、連携には初期設定とシステム改修が必要で、コストは数十万円から数百万円になる。全日本トラック協会の「経営分析報告書」(令和4年度)では、運送事業者の約6割がExcelベースの配車管理を続けており、システム投資に踏み切れていない実態があるため、連携を検討する際は自社の配車規模(1日あたりの運行件数)と拘束時間違反の発生頻度を見て、費用対効果を試算することが前提になる。

デジタコ導入後に起きる現場の変化

デジタコを導入すると、運行管理者とドライバーの間で「可視化」が進む。拘束時間、連続運転時間、速度超過など、これまで「ドライバーの自己申告」に頼っていた部分がすべて記録として残る。この変化は、現場にとって単なる監視強化ではなく、判断の根拠を持てるようになることを意味している。

拘束時間の実態が見えることで運行計画が変わる

デジタコ導入前、運行管理者は「東京から大阪まで8時間」といった「標準的な所要時間」で計画を組んでいた。しかし実際には、荷主の倉庫での待機時間、高速道路の渋滞、納品先での荷卸し時間が加わり、拘束時間は13時間を超えることが常態化していた。デジタコの記録を1ヶ月分集計すると、「東京〜大阪間は実質12〜14時間」という実態が数値で見える。

この実態を踏まえて運行計画を再設計すると、「東京〜大阪は中継輸送にする」「帰り便は翌日にずらす」といった判断が可能になり、結果としてドライバーの拘束時間が適正化され、改善基準告示の遵守率も上がっていく。つまり、デジタコが直接運行計画を変えるのではなく、記録が判断の根拠を与えることで計画の見直しが進むのである。

ドライバーの意識が「時間管理」に向く

デジタコの記録が「毎日確認される」とわかると、ドライバーは連続運転4時間を意識して休憩を取るようになる。これまで「次のSAまで我慢」していたドライバーが、「3時間50分で一度停車」に切り替える。このわずかな変化が、事故リスクの低減につながる。

ただし、ドライバーが「記録を良く見せる」ために、休憩時間を水増しして報告するケースもある。実際には荷待ち中だった時間を「休憩」と記録し、拘束時間を短く見せる。この不正を防ぐには、GPSの位置情報と運行記録を突き合わせ、「休憩場所が荷主の倉庫前」といった矛盾を見つける運用が必要であり、記録の見方そのものを現場で揃えることが重要になる。

燃料費の削減効果が数値で見える

デジタコには、アイドリング時間やエンジン回転数を記録する機種が多く、これを活用するとドライバーごとの燃料消費効率(km/L)が算出できる。エコドライブを実践しているドライバーと、急加速・急ブレーキが多いドライバーでは、同じ車両・同じ区間でも燃費に1〜2割の差が出る。

2026年6月10日時点の軽油価格は全国平均158.8円/Lで、前週比+0.3円と1週連続で上昇している。この価格水準では、月間走行距離1万kmのトラック(燃費4km/L)で、燃料費は月約40万円になる。燃費を1割改善できれば、年間約48万円のコスト削減になるため、デジタコの記録を燃料費管理に使うと削減効果を可視化できるが、価格は地域や給油所により異なるため、自社の契約単価で試算する前提が必要である。

デジタコ導入で失敗しないための注意点

デジタコ導入で失敗するパターンは、大きく3つに分かれる。「機器だけ買って運用ルールを作らない」「データを見ても改善策を打たない」「ドライバーへの説明不足で反発を招く」であり、これらはいずれもデジタコが目的化していることに起因している。

運用ルールを「後から作る」パターン

デジタコを導入してから「どう使うか」を考え始めると、現場が混乱する。典型例は、機器が納品されてから「誰がデータを回収するか」「どのタイミングで確認するか」を決めるケースであり、結果としてドライバーがUSBを持ち帰るのを忘れる、運行管理者が週末にまとめて確認するといった「後手の運用」になり、拘束時間違反を見逃しやすくなる。

デジタコ導入では、機器選定の前に「運用ルールの設計」を先に行いたい。最低限、①誰がデータを確認するか(運行管理者の担当制)、②いつ確認するか(毎日朝9時まで前日分を確認)、③違反が見つかったらどう対応するか(当日中にドライバーと面談)の3点を決めておく必要がある。このルールを文書化してドライバー全員に配布しておかないと、デジタコは「使われない機器」にとどまりやすい。

データを「見るだけ」で終わるパターン

デジタコの記録を毎日確認していても、そこから改善策を打たなければ意味がない。連続運転4時間超の記録が出ても「次から気をつけて」と口頭注意で終わる、速度超過が月10回あっても「注意」だけで具体的な指導をしないといったケースである。

データを改善につなげるには、「記録→分析→対策→実行」のサイクルを回す必要があり、例えば特定のドライバーが連続運転4時間超を月3回以上繰り返している場合は、原因を特定しなければならない。「SA満車で休憩できない」なら時間帯をずらし、「納品時刻に間に合わない」なら荷主と納品時刻を再交渉し、「ドライバーが休憩の重要性を理解していない」なら改善基準告示の内容を再教育するというように、原因ごとに対策を分ける視点が欠かせない。

ドライバーへの説明を省くパターン

デジタコを「会社の管理強化」と受け取られると、ドライバーは協力しない。最悪の場合、GPSの電源を切る、ICカードを他人に貸すといった不正行為に走る。これを防ぐには、導入前の説明会で「なぜデジタコが必要か」を丁寧に伝える必要がある。

説明のポイントは、「会社の都合」ではなく「ドライバーの安全」を前面に出すことであり、「拘束時間を守らないと、疲労で事故リスクが高まる」「連続運転4時間超は、法令違反であり、会社とドライバー両方が処分対象になる」といった、ドライバー自身にとってのリスクを明示することが重要になる。さらに、「デジタコの記録が給与や評価にどう影響するか」を透明化すると、現場の納得感を得やすい。

次にやるべきこと――デジタコを起点に管理体制を整える

デジタコ導入は、運行管理の「入口」であり「ゴール」ではない。記録が残るようになったことで、次に必要なのは「記録をどう使うか」の体制整備である。運行管理者が一人で全車両の記録を確認し続けるのは、車両数が30台を超えると物理的に限界が来るため、この段階では記録の確認を「分担」するか、システムで「自動化」するかの選択が現実的な論点になる。

拘束時間管理を「週次サイクル」で回す

デジタコの記録を「毎日確認」しても、改善策を打つタイミングがなければ意味がない。実務上、拘束時間管理は「週次サイクル」で回すのが現実的であり、毎週金曜日に全ドライバーの拘束時間実績を集計し、15時間超が週2回に達しているドライバーを抽出して、該当者には翌週の運行計画で「13時間以内に収まる近距離便」を優先的に割り振る運用が有効である。

このサイクルを回すには、デジタコのデータをExcelに落とし込み、ドライバーごとに「1日の拘束時間」「15時間超の回数」を集計するシートが必要になる。シート自体は、運行管理者がExcelの関数(SUMIF、COUNTIF等)を使えれば半日で作成できるが、重要なのは集計結果を「翌週の配車計画に反映する」運用を定着させることであり、表を作るだけで終わらせないことだ。

ドライバーとの「月次面談」で記録を共有する

デジタコの記録を「一方的な評価材料」として使うと、ドライバーは反発する。記録を「対話の材料」にするには、月に一度、運行管理者がドライバーと面談し、1ヶ月の運行実績を振り返る時間を設けるとよい。面談では、デジタコの記録を見せながら「今月の拘束時間実績」「連続運転4時間超の回数」「速度超過の有無」を確認し、「来月の目標」を一緒に決める。

この面談で重要なのは、「できていないこと」だけでなく「改善されたこと」も伝えることであり、例えば先月は連続運転4時間超が5回あったドライバーが今月は1回に減っていれば、「先月より改善できている」と評価することが次の行動につながる。こうした積み重ねが、ドライバーの意識を「時間管理」に向けていく。

デジタコと点呼記録の突き合わせで精度を上げる

デジタコの記録は、あくまで「車両の動き」を記録したものであり、ドライバーの「勤務状態」を完全には捉えられない。例えば、車両が荷主の倉庫前に停車している時間は、デジタコ上は「休憩」と記録されるが、実際には「荷待ち」で拘束時間に含まれる。この判断は、ドライバーの点呼記録や日報と突き合わせて初めて正確になる。

実務上、デジタコの記録と点呼記録を週に一度突き合わせ、「デジタコ上の休憩時間」と「点呼記録の荷待ち時間」が一致しているか確認する運用が有効である。不一致があればドライバーに確認し、記録を訂正する。この作業を繰り返すことで記録の精度が上がり、拘束時間の実態をより正確に把握できるようになる。

現場では、デジタコの記録だけを見て判断したくなる場面もあるが、停車している事実と休めていた事実は同じではなく、点呼と日報を合わせて初めて全体像が見えてくるため、記録の入口をデジタコに置きつつ、最終判断は複数の記録を照合して行う運用が欠かせない。

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